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PEOPLE

2024.05.17

技術の力と想いの力で雇用を守る 宮城蔵王のスリッパメーカー

地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画『地域創生ローカルヒーローズ』。今回おじゃましたのは、ペインター/アーティストMHAK氏を迎えたコラボシリーズ〈BLEND IT TRADITION〉でも製作を担当していただいた、宮城県は蔵王町のスリッパメーカー『株式会社クレオ』。
いち面に田畑が広がる長閑な街で、スリッパひと筋40余年。健康をテーマとしたスリッパ作りをモットーに掲げつつ地元の雇用も守り続ける、まさに宮城蔵王のヒーロー的企業を取材してきました。

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40余年の月日をかけてスリッパ作りを地場産業に

ここは宮城県刈田郡蔵王町。東北の名峰蔵王連峰の麓にて、町内の約6割を山林や原野が占めるという、緑豊かな農畜産業地帯です。そんな多くの人々が第一次産業に従事する町の中で、スリッパ専業メーカーとして40年にも渡る歴史を誇る『株式会社クレオ』。県主催のモノづくり大賞でも特別賞を受賞した経験を持つ、地域屈指の有力企業です。
そんな地元に根付き続ける名工房は、はたしてどのように育まれてきたのか。創業者にして未だ現役バリバリの同社代表、佐藤清悦さんにお話を伺いました。

株式会社クレオ 代表取締役社長/佐藤清悦さん

「元々は別会社が行っていたスリッパ製造を私が引き継ぎ、『クレオ』を設立したのが1985年。私たちはそれ以来、足と履き物の関係性をあらゆる角度から分析し、健康をテーマとした純国産にこだわりながら、自社で企画・生産・販売までを行ってきたスリッパ企業です」。

1985年設立ということは、今年で創設40年目(2024年現在)。農畜産業以外に目立った企業がないという宮城蔵王の中で、佐藤さんはスリッパ作りという産業を根付かせた、まさに地元のヒーロー的存在です。とはいえ国内生産にこだわる以上、安価な輸入品をメインとする他社との価格競争においては、不利な闘いを強いられることも。それでも佐藤さんは、その信念を曲げることはありませんでした。

品質への徹底したこだわりで大不況でも雇用を守る

「もちろん辛い時期もありました。特にここ約30年の間の日本経済は、まったく元気がありませんでしたからね。でも、だからこそ私は、地域に息づく根っこ産業を守らなければならないと考えていますし、それはこれからもずっと変わることはありません。実際に世界の経済がストップしてしまったコロナ禍においても、弊社では人員整理を行うことなく、社員やパートさんのの雇用を守るために頑張ってきました」。

それもこれも、すべてはクチコミでの高い評価とリピーターさまの支援のおかげだと、佐藤さんは端々に感謝の気持ちをにじませながら話します。そしてそんな各方面からの高評価の所以こそ、『クレオ』製品のクオリティと耐久性にあるのです。
「とにかくお客さまに喜んでもらえるよう、健康によくて、かつ長持ちするものをお届けしたいというのが私の考えです。例えば裏地ひとつとっても、通常品の倍くらいの目付けの生地を使っていたり、元来30ミリのウレタンを3ミリにまで圧縮して使用したり。そういった目に見えない部分にまで徹底的にこだわっているので、多くのお客さまから、5年もったとか10年もったとか、感謝のお言葉をいただけているんだと思います」。

笑われるほど高耐久なスリッパ作りの現場を覗き見

佐藤さん自身、お客さまから笑われるほど長持ちするという、『クレオ』スリッパの製造工場。生地の裁断から型抜き、縫製、仕上げまで、完成に至るまでの工程には、想像以上に数多くの人の手が介入しています。

こちらは、工場を案内してくれた柴崎さん。生産と企画に関する責任者として、『クレオ』のスリッパのクオリティをコントロールする屋台骨です。
「数あるスリッパメーカーの中で、弊社が最も他社さんと差別化できている部分といえば、やはり佐藤も言っていた耐久性ですね。それはアッパーやソールなどの各部材の品質もそうですし、職人の手仕事による高精度なミシンがけの存在も大きいと思います。糸がしっかり中にまで食い込んでいるので、糸が切れてしまって分解してしまったというお話は、滅多に聞きません。
それと生地の取り方にもこだわっていて、例えば柄物の生地を無作為に裁断してしまうと左右で柄が揃わなくなってしまうので、可能な限り効率を意識しながらも、左右が不揃いにならないように生地取りを行っています」。

人生の楽しみと幸せに感謝しながら、世界を想う

そんなモノづくりへの真摯な姿勢で、どんな不況の中でも雇用を守り続ける佐藤さん。その根底には、近しい存在の人々といかに人生を楽しめるか、というテーマがあるそう。
「お客さまを喜ばせたいという想いはありますが、その行き着く先は、結局、私たち自身が毎日を楽しむためなんですよね。だからうちでは、社員旅行やお花見、芋煮会などで、社員同士のコミュニケーションを積極的に図るようにしているんです。まぁコロナ以降ちょっと難しくなった部分もありますが、それでも、他社さんに比べるとずっと多いと思いますし、おかげで、みんな笑顔で仕事ができていると思います。
あとはやっぱり家族ですね。余談ですが、私、旅行が大好きなんですよ。国内外問わず、しょっちゅう色々なところに行っていて。だからあまり動物は飼いたくないんですが、孫にせがまれて、最近ヤギを飼い始めたんです。で、気づいたら6頭になっていた(笑)。もう大変ですよ、大きい囲いを作ってね。
でもそれがきっかけで孫の友達もたくさん遊びに来るようになってくれて、嬉しいですね。教員をやっていた娘も、うちに転職して一緒に働いてくれるようになったし。それはもう楽しいですよ、夏は家族であちこち旅行したり、冬はみんなでスキーに行ったり。
そういった人生の楽しみを実現してくれるスリッパ作りを40年以上も続けてこれたことは、本当に幸せです。だからこそ、その幸せに日々感謝しながら、私たちだけでなく、お客さまや世界の人々が少しでも幸せになってくれるよう、私はいつも願い続けています」。


株式会社クレオ
住所:宮城県刈田郡蔵王町大字塩沢字清水沢54番地 MAP
URL:http://www.creo88.com/index.html



Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text & Edit_Satoshi Yamamoto


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