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2024.02.27

会津木綿の伝統と現代アートのコラボレーション!
アーティストMHAK氏と会津木綿工場『はらっぱ』訪問

福島県の会津地方に古くから伝わる綿織物、会津木綿。今回そんな会津木綿のファクトリーブランド『HARAPPA(はらっぱ)』と、日本のアートシーンを牽引する会津生まれのペイントアーティスト、MHAK(マーク)さんとのコラボレーションが実現。この企画でしか買えない座布団やスリッパなどがOMUSUbee storeでリリースされます。
そんな伝統工芸と現代アートのコラボレーションは、どのように誕生したのか。そのきっかけや両者の想いを知るべく、MHAKさんご同行のうえ、約400年以上の歴史を受け継いできた会津木綿工場を訪問してきました。

株式会社はらっぱ 専務執行役員/原山修一さん

1978年、福島県福島市生まれ。創業約120年の会津木綿の織元会社『原山織物工場』の事業を継承し、2015年3月に設立された株式会社はらっぱで専務執行役員を務める。東京でテレビ関連会社の勤務を経て、株式会社はらっぱ設立に伴い、父親の実家である原山織物工場の現場に立つ。

ペイントアーティスト/MHAKさん

1981年、福島県会津若松市生まれ。絵画をインテリアの一部として捉えた“生活空間との共存”をテーマに、壁画を中心とした制作活動を行う。曲線で構築し反復する独特なスタイルで、個人邸や飲食店、ホテル客室など数々の内装壁画を手掛ける。また、グローバルメーカーからストリートブランドまで様々な企業へアートワークを提供する。

名前は知ってても中身は知らない『会津木綿』の歴史と特徴

本題に入るその前に、まずは会津木綿についてお勉強。原山さん、ざっくりご説明をお願いできますか?
「会津木綿は、約400年前から陸奥国会津郡(現在の福島県西部)に伝わる伝統工芸品で、夏は涼しく冬は暖かい綿生地として、地元の人々に愛されてきました。主に野良着として着用されていた堅牢な生地は、家庭用洗濯機での洗濯にも耐えられるほど丈夫です。
また最初は糊も効いているためゴワっとしていますが、使うほどに柔らかくフワっとした着心地になるのも特徴。染め糸による美しい縞柄も、長く着れば着るほど味わいを増していくんです」。

そんな会津木綿を手掛ける織元も、現在はたった3社のみ。そのひとつが今回訪問した『株式会社はらっぱ』です。

染めから織りまで行う唯一の会津木綿工場『はらっぱ』

2015年3月、会津若松で120年その暖簾を守り続けた会津木綿工場『原山織物工場』の事業を継承するために、先代社長の従兄弟である小野太成さんと、会津木綿をメイン素材として服作りを行ってきた『ヤンマ産業』の山崎ナナさんによって設立した『はらっぱ』。
明治32年創業の『原山織物工場』は新たな社名とともに生まれ変わり、合わせて『HARAPPA』のブランド名を掲げる会津木綿の織元として再スタートを切りました。

「もともと『原山織物工場』は、染めから織りまでの全工程を行う会津唯一の工場でした。しかし染色をしていた先代社長の急逝により、しばらく自社での染色ができなくなったんです。その後、少しずつ若手も育ち、2019年から再び染めもできるようになり、改めて、染色から織りまでを自社で賄う唯一の会津木綿工場となりました。
私たち『はらっぱ』は、そんな『原山織物工場』が守ってきたポリシーをしっかりと受け継ぎながらも、次世代への橋渡しとなるような事業展開を心がけ、400年続く会津木綿の伝統を未来に繋げ続ける会社でありたいと考えています」。

120年続く工房に潜入! 会津木綿ができるまで

と、前段のお話が済んだところで、早速工場に潜入。
まずは染色の前段階として、糸の不純物や汚れを取り除く”精練“という作業から始めます。専用の石鹸を溶かした熱湯に漬けて洗浄した後、石鹸成分をしっかり除去。この精練をしなければ糸がきれいに染まらないそう。
次に染色機を使い、一定量巻いて束ねた糸を回転させながら染色。糸を巻いているパイプから染料が噴射され、生成りの糸が徐々に染まっていきます。

「これを何度も繰り返して糸を染め上げます。現在は化染のみですが、先代までは藍染も行っていました。藍染は非常に手間がかかるうえに難しく、先代社長が担当していたのでその技術が途絶えている状態です。ゆくゆくは藍染も復活させたいと思っています」と原山さん。

染色後は糊付けを行い、脱水機にかけてから竹竿に干して乾燥させます。基本的には天日干しですが、冬はある程度乾燥させてから室内で暖房を使って一気に乾かすのだとか。
「糊付けすることで糸の毛羽立ちを抑えられます。また、しっかり乾燥させないとカビてくるので、冬場は無理矢理にでも糸の中まで乾かします」。

続いて、染め場から織機が並ぶ工房へ移動。まず染色した糸をボビンに巻き取り、そこから筬(おさ)と呼ばれる織機用の道具に通します。これは縦糸を整える重要なパーツで、なんと900本もの糸を生地デザインにあわせて順番に手作業で通していくそう。

『はらっぱ』ではなんと、約100年前に製造された織機を現役で使用。『原山織物工場』から引き継いだ26台の織機が稼働しており、1台あたり1日(7時間)で約18mの生地を織り上げます。動力はモーターですが100年モノの織機を扱うのは難しく、常にスタッフが付きっきり。工房では縦糸に横糸を通すシャトルの音が絶えず鳴り響き、会津木綿の特徴である縞模様の生地ができあがっていく様子に見入ってしまいました。
また縞模様と無地のほか、チェック柄を織れる織機も4台あり。これは2年前に廃業した遠州木綿の機屋から譲り受けたもの。
「うちで使えるようにカスタムし、やっと動力と繋げて4台のうち1台を動かしています。まだ試作段階で、どんな柄が織れるのか、量産できるほど動くのか調整中です」。

ついに実現したMHAKとHARAPPAのコラボレーション

MHAK×OMUSUbee 会津木綿 座布団 クッション ベージュ/Beige 16,500 円 (税込)MHAK×OMUSUbee 天童の将棋駒セット (将棋盤/駒/巾着) 16,500 円 (税込)MHAK×OMUSUbee 会津木綿 ポーチ 4,400 円 (税込)

と、工場もひと通り見学させていただいたところで、いよいよ本題。会津木綿ブランド『HARAPPA』と、ペイントアーティストとして人気を博すMHAKさんのコラボレーション企画について。

−いま注目を集めるアーティストMHAK氏
MHAKさんは“生活空間との共存”をテーマに、数々の内装壁画を手掛けるペイントアーティスト。アパレルブランドからのオファーも殺到し、曲線が印象的なオリジナルのパターンは「MHAK柄」と呼ばれ、彼のシグネチャーとして支持されています。

また地域創生としての地方での活動や、世界中にメンバーを要するアーティスト集団『81 BASTARDS』の一員などその活動は幅広く、日本だけでなくアメリカや欧州、南米でも作品を発表。国内外にその世界観を拡大している注目のアーティストです。

−コラボレーションのきっかけは?
そんなMHAKさんは会津若松出身。『HARAPPA』とは同郷であり、会津が繋いだコラボレーションです。そんな両者の出会い、コラボのきっかけは?

MHAKさん「実はもともと、伝統工芸にはあまり興味がなかったんです。でも3.11の震災以降、色々考え方が変わって自分の地元に誇りを持つようになりました。最初に会津塗りとのコラボをやらせてもらってから、その他の会津の伝統工芸にも注目するようになったんです。そんな中で会津木綿を見かける機会も増えて、いいじゃん!と。もちろん『はらっぱ』の存在も知っていました。やっぱり色々なところで話に出てくるので。
原山さんに最初にお会いしたのは、たぶん『LIVE AZUMA』ですよね?  福島でやっている一番でっかい音楽フェスがあるんですけど、そこで紹介してもらいました」。

原山さん「おそらく2年前くらい。ボクも当然MHAKさんのことは知っていたので、やっとお会いできたっていう感じでしたね。MHAKさんの作品は、会津中のいたる所に描かれているんですけど、すごく調和されてるんですよ。そのアートと会津木綿がコラボできることになった時は、本当にうれしかったですね」。

−会津に対する想いとは?
3.11をきっかけに地元の伝統工芸に目を向けるようになったMHAKさんと、会津木綿の織元として400年の歴史を受け継ぐ『はらっぱ』。そんな2人にとって、やはり会津という地域は特別だと言います。

MHAKさん「会津出身ということに誇りがあるんですよね。会津の人たちはみんな福島出身とは言わず、会津出身って言いますから。きっと戊辰戦争とかの歴史的な背景もあって、多くの人が会津プライドを持っているんだと思います。僕は一度アメリカに行っていた時期もあったので、特にそう感じるんだと思います」。

原山さん「僕の場合、生まれは福島市ですが、会津若松の『原山織物工場』が父の実家なんです。父は建築業をしていましたが、母が縫製ができるので、子供の頃から家には会津木綿の生地が山積みでした。縫製してこっちに送ってをずっと見てきたので、会津木綿にはすごく強い思い入れがあります」。

こだわりが詰まったコラボアイテムが完成

会津愛によって生まれた今回のコラボレーション。完成したアイテムを見ながら、お互いがこだわった部分や表現したかったことなどについて伺いました。

MHAKさん「基本的にはあまり目立ちたくなくて、やっぱり会津木綿のよさが出ていることが一番じゃないですか。僕の柄が全体を覆ってしまうと会津木綿である必要はなくなってしまうので、使っていくうえでの馴染み方とかも含めて僕っぽさを隠したかったんです。結果的にわりと目立ってしまいましたけど(笑)」。

原山さん「僕は単純にワクワクして、どういうデザインになるんだろうって楽しみでした。MHAKさんの作品を色々見させてもらう中で、会津木綿をさらに魅力的なものにしてもらえるっていうのがわかっていたので、その期待感が一番にありましたね」。

MHAKさん「でも最初は、無茶苦茶なこと言っちゃってましたよね。最終的に僕の柄はプリントで入れたんですが、初めは、これ織れませんか? って。いやいやプリントじゃなくて織ってもらえるでしょくらいのノリだったんですけど、さっき実際に工場を見させてもらって、全然むずかしいってことがわかりました(笑)」。

原山さん「会津木綿は平織りなので、縦糸と横糸を組み合わせた本当に単純な初歩的な織り方なんです。直線的な模様であればできるのですが、MHAKさんの柄は曲線的なので難しいんですよ。だからMHAKさんから連絡もらった時に、やばい!このコラボ流れるかもって焦りましたね。
実はその話の前から、MHAKさんはプリントに抵抗があるんじゃないかと思っていたんです。ただ表現方法としてはプリントが落ち着いたので、色々お話しさせてもらい、このカタチに着地しました」。

−伝統工芸の魅力を活かしたデザイン
会津木綿をフィーチャーし、もともとの生地の魅力を活かしながらデザインしたというMHAKさん。伝統工芸とコラボした今回の企画では、会津木綿を使った座布団や将棋セット(駒入れが会津木綿)、提灯や木札といった和のアイテムをリリース。

MHAKさん「ありきたりなクッションは作りたくなかったので、あえて座布団に。ポーチだとありきたりなので将棋の駒を入れる巾着に。せっかく伝統工芸とコラボさせてもらうので、そこは意識しました。座布団も専門の職人さんが縫ってくれていたり、そういう人のぬくもりを感じるところに力を入れたいという想いはありましたね」。

原山さん「僕は将棋好きなので、駒入れの発想に思わず唸りました。会津木綿は使うほどに生地が馴染んで風合いが増していくので、座布団もぜひ座り倒してほしいですね。もともと会津木綿は農作業用の野良着の生地だったので、丈夫で長持ち。昔の人は穴が空いたら継ぎはぎをしてずっと大事に着ていましたから、今回のコラボアイテムも長く使ってもらえるとうれしいです」。

こうして誕生した『MHAK』×『HARAPPA』のコラボアイテム。会津木綿を使った座布団、スリッパ、巾着がOMUSUbee storeでリリースされます。このほかMHAKさんのアートワークを落とし込んだアイテムも展開するのでお楽しみに!




株式会社はらっぱ
住所:福島県会津若松市日吉町4-25 MAP
URL:https://www.harappaaizu.com



Credit
Photo_Shuhei Nomachi
Text_Masahiro Tsuda
Edit_Satoshi Yamamoto


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