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2024.04.30

江戸時代からの歴史を継承しながら進化する
老舗京提灯工房の10代目を訪ねて

全国各地の伝統工芸に注目し、その魅力を発信する連載企画「ボクとワタシの伝統工芸」。今回は江戸時代から続く京提灯工房の大老舗、『小嶋商店』を訪問。OMUSUbee主導のコラボ企画〈BLEND IT TRADITION〉を筆頭に、世界中のクリエイティブアカウントからも製作の依頼を受ける、進化し続ける伝統工芸のカタチを紐解きます。

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235年の歴史と伝統が凝縮された京提灯工房に潜入!

全国各地にさまざまな伝統文化を残し続ける日本の中でも、有形無形を問わずして、際立ってその数が多い場所、京都。そんな街全体に伝統が息づくこの古都で、江戸時代から京提灯を作り続ける老舗工房があります。それがこちら、『小嶋商店』。ペインター/アーティストのMHAK氏を招いたアート×伝統工芸企画〈BLEND IT TRADITION〉にも参画してくれた、江戸から続く伝統工芸の体現地です。そんな『小嶋商店』さんを訪ねつつ、現在の代表である10代目・小嶋 諒さんにお話を伺ってきました。

『小嶋商店』10代目/提灯職人_小嶋 諒さん

「昔のこと過ぎて実際のところはわかりませんが、一応、創業は1789年、江戸時代の寛政年間としています。初代は元々、提灯の上下の黒枠(重化)を作っていたそうで、それから提灯本体にも携わるようになっていき、卸売をメインでやっていた時代もあったみたいですね。ちなみにそこの白黒の写真(スライド2枚目)が7代目、つまり僕のひいおじいちゃんの時代。右が7代目のひいおじいちゃんで、真ん中がひいおばあちゃん。さらに1番左で座っているのが6代目だから、ひいひいおじいちゃんですね。家族ぐるみで提灯を作り続けてきたのは、昔も今もずっと変わってないんです」。

そんな代々続く家族経営の京提灯工房に生まれた小嶋さん。同じく京提灯職人である兄の俊さん(現在は独立)と手を取り合い、その伝統を守りつつも、新たな可能性に挑戦し続けています。そしてその兄弟の活動が実り、今では引く手あまた。今回の企画で白羽の矢を立てたMHAKさんだけでなく、世界的にも有名な現代美術作家やワールドワイドなアパレルブランド、超高級時計ブランドなど、国内外のビッグネームから製作を依頼されるまでに、その市場は拡大し続けています。

伝統工芸品のブランド化で新規市場を開拓

「江戸時代から続く老舗とかいうと聞こえは良いですが、結局のところは下請け業者ですからね。製作に手間もかかるし、そもそも提灯ってお祭りのときくらいしか需要がないですから。実際、キツい時代も長かったんですよ。それで初めに兄貴が動き出してくれたんです、自分たちの提灯をブランド化しようって。
そこから兄貴の友人のブランドディレクターの方が手伝ってくれるようになり、ロゴもHPも新しく作り変えてくれて、徐々にファッション業界などの新しい場所にも認知してもらえるようになって。
今ではこういった企画にも声をかけてもらえるようになりましたし、海外のお客さんもかなり多くなってますし、本当にありがたい話です」。

兄弟を中心とした新たな時代の取り組みにより、今までになかったフィールドを開拓した『小嶋商店』。現在は提灯の新たな使い道として、室内照明の製作に注力しているそう。

新たな存在価値を体現する室内灯としての提灯

「さっきも言いましたけど、これまで提灯って、お祭りのときくらいしか需要がなかったんですよ。だけど基本は灯りですからね。じゃあ継続的に一般のお客さんにも買っていただける灯りといったら、やっぱり室内照明なんですよ。いま作っているのも、まさに室内用。幸い木型は代々受け継がれてきているから数え切れないくらいありますし、色々応用も効くんです。
ちなみにいまここにある木型の中で1番古いのがこれ(スライド2枚目)で、明治45年のものですね。今回のMHAKさんとのコラボレーションでも使わせてもらった木型です」。

飽くなきチャレンジが京提灯の進化を生み出す

最後に、江戸時代から続く伝統工芸を守る人間として、そのこだわりと美学を聞いてみました。

「個人的には、守るっていうと、なんだか少しネガティブな印象を受けるんですよ。だから僕が大切にしているのは、どう続けるか、どう発展させていくか、ということですかね。そのためにも、チャレンジすることをやめちゃいけないと、常に自分に言い聞かせています。もちろん、京提灯の伝統は守りながら。

京提灯が普通の提灯と違うのって、骨組みの作り方なんです。一般的な提灯は、1本の竹ひごを螺旋状に成形して骨組みを作るんですが、僕らが作っている京提灯は、1本1本が分離した大きさの違う輪っかをいくつも重ねてカタチを作る。だから1本骨が折れたとしても修理できるし、そもそも丈夫だし重厚感もあるんです。当然その分、製作にかかる時間も大きく違います。
だけど、さっき室内照明に力を入れていると言いましたが、やっぱりお客さまのお店やお部屋で使うものなら、仕上げは今までよりもさらに美しくなければいけないと思うんですよ。それを意識するようになってから、和紙の継ぎ目を極力細くするようにしたり、修理の仕方も新しくルールを決めたり、要は、今までよりもさらに製作時間がかかるようになっているんです。

でも僕は、それも未来のためのチャレンジのひとつだと思っていますし、『小嶋商店』の進化だと捉えています。もちろんこれから先もそういったチャレンジは続けていくし、そのたびに少しずつ進化していくんだと思います。そういう意味では、僕自身も今後どう自分たちが進化できるか、とても楽しみなんですよね」。


小嶋商店
住所:京都市東山区今熊野椥ノ森町 11-24 MAP
URL:https://kojima-shoten.jp/

Credit
Photo_Yuki Araoka
Text & Edit_Satoshi Yamamoto


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