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2024.04.22

聖地・山形県天童市から将棋界をバックアップ! 将棋駒工房『中島清吉商店』の矜持を紐解く

全国各地の伝統工芸に注目し、その魅力を発信する連載企画、「ボクとワタシの伝統工芸」。今回訪れたのは、将棋駒の生産量日本一を誇る山形県天童市にて、1880年より続く老舗の将棋駒工房、『中島清吉商店』。ペインター/アーティストMHAK氏を迎えたコラボシリーズ“MHAK × Japan Craft”でもその製作を担当した、天童将棋駒の匠の元へ、いざ潜入! MHAKさんもいます。

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将棋一色の天童で140年以上続く老舗工房

町の至る場所に、『将棋』の文字や『将棋駒』を模したオブジェが点在する山形県天童市。江戸時代に武士の内職として将棋駒作りが推奨されてから、現在ではその国内生産量9割以上を占めるという、文字どおり将棋駒の聖地です。『中島清吉商店』は、そんな聖地にて4代続く大老舗。現代表は、自身も木地師として将棋駒作りに心血を注ぐ中島正晴さん。
「元々この天童は、主に安価な普及品の将棋駒を作っていた場所でした。だけどバブルがはじけた後ぐらいから段々と右肩下がりになってく中で、テレビゲームの普及も手伝い一般需要も大きく減っていき、経営的にとても厳しくなっていったんです。そこで、当時の代表であった母とも話し合い、ウチはそれまでの大量生産とは真逆の方向、つまり、ひとつひとつ手間を掛けて作っていく品質重視の少量生産へとシフトしようと、大きく舵を切っていきました。2000年前後くらいのことですね」。
以来約25年。『中島清吉商店』は、将棋駒の聖地・天童においても屈指の高級将棋駒工房として、広く全国にその名を轟かせ続けています。

普及品から高級品、お土産品までオールカバー

ひと言に将棋の駒と言っても、そこには幾つかの種類があります。まずは今回のMHAKさんとのコラボレーションでも採用された、スタンプで印字する〈押駒〉。そして木地に直接文字を書く〈書駒〉。さらに文字を彫って漆で着色する〈彫駒〉にも、機械彫りと手彫りのバリエーションあり。加えて使用する木材にもグレードがあって、中でも『本ツゲ材』が最高級だとか。
「ウチは手作りの駒をメインに作っていますが、一般のお客さまに向けた普及品も、機械彫りの中級品も、専業の彫り職人さんに彫っていただく最高級品も、あらゆるグレードの将棋駒を製造・販売しています。さらには、縁起物としてお土産品にも選ばれる『左馬』などの飾り駒も作っていて、ここまで広くすべてを網羅してるのは、天童の中でも私たちだけですね」。

取材に同行したMHAKさんは、インタビュー中、飾り駒に絵付けができる店頭でのサービスに挑戦。縁起物として愛される『左馬』の文字を、グラフィカルなデザインと驚きのハイスピード(40分弱!)で仕上げていました。さすが。

いかにセットで美しく魅せるか。それが木地師の見せ所

せっかくなのでと、木地の成形工場も案内してくれた中島さん。さぞかし繊細な機材で切り出しているのかと思いきや、実際に使っているのは、家具職人さんや大工さんが使っているものと同じ、大きな丸ノコでした。
「作っているものが小さいので驚かれますが、私たち木地師からすれば、そんなに難しい作業じゃないんです。もちろん、丁寧に正確に成形することは大切ですが、それは、ある程度の技術があればクリアできる。
それよりも難しいのは、木地そのものの取り方と選別なんです。いい将棋駒の基準はいくつかありますが、何より大切なのは、40枚全て揃ったときに、いかに木目の統一感があるか。中でも特に美しいとされている『虎斑』という木目模様は、本ツゲ材ならではの特徴。ですが個体差がありますので、すべてのツゲ材で『虎斑』がキレイに出るわけではありません。そして仮にキレイな『虎斑』に出会ったとしても、それを40枚セットで美しく魅せられるように切り分けるのは至難の業。これこそ木地師の腕の見せ所であり、最も難しい部分です」。

新たな挑戦が伝統工芸の未来に繋がる

藤井聡太8冠の活躍もあり、ここ何年か、空前のブームと言われる将棋界。だけどそれもいつまで続くかわからない。そんなこれからの未来を見据えたとき、必要なのは世間の認知だと、中島さんは語ります。
「私たち伝統工芸に携わるものは、いかにこの伝統文化と品質の高さをPRしていくかを、真剣に考えなければなりません。そのためにも、通り一遍のことだけをやるのではなく、新しいことにチャレンジしていくべきです。そういう意味でも今回のコラボレーションは、非常に意味のある試みだったと思います。
それと正直に言って今回の駒は、今までにまったくなかった字体だったということもあり、製作にとても難儀したんです。ですがこれを実現できたということは私たちの自信にもなりましたし、未来の『中島清吉商店』に繋がる、大きな経験になったと感じています」。



中島清吉商店
住所:山形県天童市田鶴町2-2-2 MAP
URL:https://www.shogi-koma.com/



Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text & Edit_Satoshi Yamamoto

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