2024.03.25
日本全国各地に散らばる伝統や銘品、文化などを掘り下げながら、そこでしか出会えないモノ、ヒト、コトをご紹介する本企画。今回クローズアップするのは、日本最古の神社のひとつ『出雲大社』のお膝元で、センスフルなライフスタイルを提案するショップ『B.S.K.K』。
自家焙煎コーヒーや自家製パンなどを提供するランチタイムカフェ、備え付けの本格窯で眼の前で焼いてくれるディナータイムのピザバー、そしてアクティブライフに寄り添うアパレルや雑貨を販売するセレクトショップと、複数のアカウントをひとつ屋根の下にギュギュっと凝縮させた、そのあふれる魅力にせまります。
目次
出雲大社の『勢溜の大鳥居』から歩いて5分ほどの場所にある、オーセンティックな佇まいの洋館。こちらが、今回クローズアップするライフスタイルショップ『B.S.K.K』。
東京と出雲で2拠点生活を送るモデルの春日潤也さん、『ZOZOTOWN』アウトドア部門リーダーの児玉敦洋さん、自転車のプロ石橋剛仁さん、そして『B.S.K.K』内の何でも屋こと代表の大坪厚志さんといった個性あふれる4人が共同オーナーとして運営する、東京でもにわかに話題のお店です。
なんともクラシックな雰囲気たっぷりの建物は、眺めているだけで圧倒されてしまうほど。さっそく中へ入ってみましょう。
こちらはもともと、医院の院長先生が住まわれていたという築100年の個人宅。その出会いは超偶然で、当時、GPSとAR技術を組み合わせたスマホゲームにハマっていたメンバーが、プレイ中にたまたま見つけた物件だとか。しかしその時点で既に数十年も空き家となっていたため、控えめに言っても、見た目はほぼ廃墟。その洋館風な面構えも相まって、近所の子どもたちにはお化け屋敷と恐れられていたそう。
とはいえ中身は、ご覧のとおりの純和風。創設メンバーが知恵を絞ってリノベーションをし、現在のカタチになったとか。元からの設えが上等だったとはいえ、素人4人でここまでモダンなムードに仕上げてしまうデザイン力は驚き。荒れ放題だった庭も自分たちで作り直したというから、その熱量には頭が下がります。
そんな努力の結晶ともいえる建物1階部分では、ランチタイムをカフェ『高濱庭園』、ディナータイムをピザバー『国際食堂』として、時間でわけて営業中。夜の模様はまた後述しますので、しばしお時間を。
昼の部を担当するカフェ『高濱庭園』では、メンバー4人の中でも代表を務める大坪厚志さんこだわりの、自家焙煎コーヒーを提供中。スタッフさんの煎れ方も実に丁寧で、お店の姿勢が伺えます。
しっかりお腹を満たしたい人には、ランチメニューのパスタセットがオススメ。せっかくなのでいただきましょうということで、スタッフは〈ビーフ100%ボロネーゼ〉のパスタセットを注文。お肉のガツンとした旨味を活かしつつも、重すぎない口当たりと味わいが楽しめるひと皿でした。サラダはとにかくカラフルで、目にもお腹にもうれしい逸品。スタッフさんオススメの〈スコーンラムレーズンバターサンド〉も最高でした。
後で聞いたところでは、大坪さん個人的には〈季節野菜と塩豚のマスタードパスタ〉がベスト、とのこと。もうすでに、またここに来る大きな理由ができました……(笑)。
お腹いっぱいになったところで、お婆ちゃんちのように少々急な階段(!)をのぼり、2階部分へと移動。そこは、スケートデッキやグラフィックアートなどがディスプレイされる、4人の趣味が凝縮したショップスペース。アパレルやキャンプグッズ、雑貨など、こだわりと世界観が垣間見えるアイテムたちが、所狭しと並べられています。
奥の部屋でシルクスクリーンプリントに精を出していた代表の大坪さんが、「自分は表に出る役目ではないので、写真はちょっと……(笑)」と言いつつも、にこやかに説明してくれました。
大坪さん「年齢は離れてるヤツもいるけど、『B.S.K.K』の共同オーナーであるボクら4人はみんな出雲出身で、昔っからの友達。(春日)潤也なんて、高校生の頃はほぼ毎日ボクの家にいましたよ。その当時からスケボーと釣りが大好きで、常に釣竿かデッキを持ってましたね(笑)。それから彼がモデルの仕事を始めるために上京して、あまり会ってない時期もありましたが、今はまた、こうして一緒にお店を運営している。
ここはそんな昔からの友達連中が集まって、それぞれの好きなことを詰め込んだ、遊び場の延長のような場所なんです。好きな友人たちと、好きな場所で、好きなことをやり続ける。そんな感じのスペースですね。
大坪さん「それはもちろん、昼間のカフェも、夜のピザもビールも、全部同じ。みんなが好きなことを、みんなで仕事にしているんです。アパレルのシルクスクリーンだって、3日間ぐらい部屋にこもって、ひたすらプリントし続けたりすることもありますよ。でも好きだからできるし、好きだからこそ全力で取り組めてるんだと思います。
そんな感じだから、ボクら4人以外のここで働いてくれてるメンバーも、ほぼみんな身内。ボクの妻も潤也の奥さんもガッツリ手伝ってくれてるし、そうじゃない子も、めちゃくちゃ近所の子だったり。ピザを焼いてくれてる子は、潤也の同級生ですしね。そういうある意味ファミリーのような、極狭いコミュニティーで成り立っているんです。
そうそう、あとでピザも食べていってくださいね。めちゃくちゃウマいから。16時半くらいから窯に火を入れるので、その頃また来てくださいよ」。
いちど別の取材を挟んで、撮影チームが再び『B.S.K.K』へと戻ってきたのは、予定を大きく過ぎた17時過ぎ。中に入ると、潤也さんの同級生だというピザ職人シュウスケさんが、既にスタンバイしてくれていました。
お待たせしてスイマセン!
なんて恐縮しつつも、昼間と違う光景にちょっとびっくり。っていうかこのレイアウト、どういうこと? 半円のテーブルの中に配置されたキッチンスペースは、まるでステージさながら。さらにその背景には、古民家にはあるまじき巨大なピザ窯が! お寿司屋さんのカウンターのように、オーダーごとに仕込んで焼いて、という一連の流れを眼の前で見ながら食べることができる、エンタメ性バツグンの仕組みになっていました。
これには流石に驚いた。大坪さん、ちょっと贅沢すぎやしませんか?
大坪さん「ですよね(笑)。うちのお店のとっておきです。ちなみにこのピザ窯は、日本でも数人しかいないピザ窯職人さんにお願いして、けっこうな大工事の末に導入した自慢の窯です。
以前は一般のお客様向けにも提供していたんですが、やっぱり対応できる人数にも限度があるので、いまは基本的に友人知人関係だけのために営業しています。ご興味ある方は『国際食堂』のインスタグラムからご連絡ください」。
気になるお味も、もちろん絶品。このシチュエーションでの焼き立てピザというだけでもウマいのに、シュンスケさんの腕前も相当なもので、我々もう降参です。
合わせて、出雲市内の別の場所に拠点を構える系列のクラフトビールメーカー『3rd Barrel Brewery』の生ビールもいただけば、もう取材は大満足。まさにここでしか味わえない、超スペシャルな夜を堪能させていただきました。
『B.S.K.K』の取材から1週間後。所変わって、ここは渋谷駅ほど近くの『ミヤシタパーク』前。裏を話せば、「潤也くんの出雲のお店がヤバいらしい」という噂から始まったこの企画。だったらご本人にも話を聞かねば! ということで、出雲取材の際には東京で仕事をしていて会えなかった、春日潤也さんにお会いしてきました。
ー2拠点生活をやってみようと決意したきっかけは?
春日さん「もちろん『B.S.K.K』のこともあったけど、1番は子どもですね。いま上の子が小4なんですけど、小学校に入る前までには島根に引っ越して、向こうで子育てをしたいっていう気持ちがずっとあって。そこに『B.S.K.K』のことも乗っかってきて決意しました」。
ー島根と東京の2拠点生活、実際のところどうですか?
春日さん「飛行機の時間が絶対に付きまとうから、スケジュールの面でキツいっていうのはありますね。でもそれ以外は最高ですよ。向こうにいる時は、しょっちゅう仕事前に釣りとかサーフィンとか行ってるし。その分朝も早いし夜やってるお店も少ないから、お酒飲みにいったりとかも全然ないし。お陰ですっかり健康的な生活になりました(笑)」。
ー家族の反応、特に奥さまの反応はどうですか?
春日さん「どうなんだろう。でも楽しそうですよ。公園は広いし、人間関係も良好そうだし。『B.S.K.K』のメンバーって、ホントに身内で固まってるんですよ。うちの奥さんも(大坪)厚志くんの奥さんも『B.S.K.K』で働いてるし、なんなら子どもの保育園も一緒だし、まさに家族ぐるみ。他のスタッフもみんなそんな感じの距離感だから、誰かの子どもが風邪引いたら、お店の全員でフォローする、みたいな(笑)。
とはいえそんなにベッタリな感じでもないし、良い距離感なんじゃないですかね。東京みたいな見栄の張り合いみたいのも皆無だし、全体的にすごい楽だと思います」。
ー『B.S.K.K』の中での春日さんの役割は?
春日さん「経理関係を大坪が見てるってことと以外、特に決まった役割とかはないんですよ。まぁ誰がどのジャンルに強いっていうのは各々の特徴としてはあるけど、基本的には、それぞれが持ってるネタや興味のあるモノを出し合って、その時々でブラッシュアップしていく感じなので。
とはいえ定期的に会議とかがあるわけでもなくて、何か特別な招集がない限り、4人全員が集まるってことも滅多にないですね。あくまで仲間同士の自然な関係の中で、自然に発展していってる感じで。でも、それくらいの距離感が良いんだと思います。だってみんな個性強いから、しょっちゅう集まって会議だなんだってやってたら、絶対ケンカしますよ(笑)」。
ー今後チャレンジしていこうと計画していることは?
春日さん「いまの店がオープンしてから、ずっと大きな手を打ってきちゃってるから、これからはむしろ、もっと小さなことをコツコツやってかないとダメかな、とは思っています。例えば、地域社会との密着だったり、島根の人たちとのコラボレーションだったり。いままでは東京のカルチャーを島根に持って行く作業だったけど、これからはその逆で、もっと島根のカルチャーを入れていきたいですね。そういう近い距離での活動も、長い目で見たら絶対に必要になるはずだから」。
ー最後にまだ『B.S.K.K』に行ったことがない方にメッセージを
春日さん「うちに来るってことは、多分みなさん『出雲大社』に行くってことだと思うんですけど、やっぱり『出雲大社』ってまぁまぁ広いし、意外と疲れるんですよね。もちろん休憩できるお店もいろいろあるけど、うちみたいなところは、他にないんじゃないかな。
店内は落ち着いてるし、だけど今っぽさもあるし、ボクらが必死に作った庭もあるし(笑)。他では味わえないリラックスした時間を楽しめると思います。提供するメニューももちろんですが、居心地だけは絶対ほかに負けないから、ぜひ休憩がてらに足を運んでみてください」。
B.S.K.K
住所:島根県出雲市大社町杵築東463-1 MAP
URL:https://bskk.jp/
Credit
Photo_Shuhei Nomachi
Text_Nozomu Miura
Edit_Satoshi Yamamoto
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