2024.03.13
旅先での食事に、地元で人気の老舗ご飯屋さんへ。流行りの店もいいけれど、地元の方々に愛され続けている味を探して飛び込んでみるのも旅の醍醐味です。今回の「ローカル魅力発見旅」では、富士河口湖で約60年続く『味処 まんぷく』をご紹介。知る人ぞ知る河口湖のB級グルメ〈かっぱめし〉を求め、ふらりと立ち寄ってみました。
目次
河口湖畔の国道137号線は、横を見れば雄大な河口湖が広がり、視線を上げれば富士山が見上げられるという、まさに富士河口湖を満喫できる目抜き通り。そんな137号線を河口湖駅から河口湖の北東方面へと車を走らせると、『味処 まんぷく』が見えてきます。
この地域で家族代々、60年に渡って営業している食事処で、13年前に現在の場所に移転。美術館や『旅の駅 kawaguchiko base』からも近く、観光スポットに行く前後に寄ることができる、ちょうど良い場所にあるお店です。
店内は、昔ながらのお食事処といった落ち着いた雰囲気の中にも、隅々までお掃除が行き届いた清潔感あふれる空間。なんだか、初めて来たのに何度も来たことがあるような、アットホームな空気が漂っています。
特に建物右奥の座敷席は、日当たりもよく太陽の光も燦々。心地よい日差しを感じながら、広々ゆっくりと食事ができます。水槽やだるま、可愛らしい置物などもあり、中でも木彫りの熊は迫力満点。コック帽を被った河童らしきぬいぐるみの後ろ姿も気になりますが、これは後ほど。
お目当ての〈かっぱめし〉をいただく前に、まずはお店のもうひとつの看板メニューである〈天丼〉が着丼。2尾の海老天がそびえ立つ、ワクワクする見た目は圧巻。カラッと揚がった天ぷらは油に重たさがないのが特徴で、見た目のボリュームに反して、サクッとペロっといただける逸品です。
「私自身が天丼が大好きなので、とにかくたくさん食べ歩き、自分が好きな味を追求しました。美味しくて胸焼けしない天丼です」。そう教えてくれたのは店主の中田さん。詳しいレシピは企業秘密ですが、天ぷら粉やタレに工夫を凝らしているそう。
天丼好きはこれを頼んでおけば間違いない! そう太鼓判を押せるひと品です。
メニューを眺めていたら、他にも美味しそうな料理がたくさん。そこで天丼以外のおすすめを中田さんにお聞きしました。
「もつ煮も人気です。豚もつを使用した〈もつ煮皿〉と鶏もつの〈とりもつ皿〉があり、〈もつ煮皿〉は辛めの味。〈とりもつ皿〉は甲府の郷土料理なんですけど、ウチの方が美味しいと言ってくださる方もいらっしゃって、大変好評ですよ」。
車を運転しない方は、もつ煮と一緒にお酒なんかもいかがでしょうか。日差しが差し込む座敷で、もつ煮を肴にキュキュっと1杯。想像しただけでたまらないですね。
そうこうするうち、お目当てのひと品が到着。前述の河童のぬいぐるみもアピールしている富士河口湖のローカルグルメ、〈かっぱめし〉です。恐らく、初耳の方も多いのでは? というわけで中田さん、〈かっぱめし〉について教えてください。
「〈かっぱめし〉は、きゅうりの浅漬け、味付きとろろ、白ごま、刻み海苔が入った丼物です。この地域はきゅうりや山芋が特産品で、河童伝説もあります。それらを組み合わせ、2009年に『富士河口湖名物開発委員会』が考案したご当地メニューなんです。富士河口湖の飲食店や民宿などで提供されていて、店ごとにアレンジが加えられており、当店では『甲州富士桜ポーク』を使用したポークソテーと新鮮な地元野菜をのせています」。
さらにお話を聞くと、〈かっぱめし〉が考案された当初は約50店舗で提供されていたものの、現在では数店舗だけに減少。今やエリア内でもレアなローカルグルメとなっているそう。
肝心のお味は、きゅうりととろろであっさりとしていながら、ボリューミーなポークソテーで食べごたえも十分。豚肉、とろろ、きゅうりの浅漬けのバランスもお見事で、異なる歯ごたえが渾然一体となった食感は、一度は試す価値あり。旅の思い出にと注文するものの、その完成されたお味に驚く方も多いとのことです。
そんな隠れたローカルフードから、店主がたどり着いた理想の〈天丼〉、地域に根付いた伝統メニューまで。豊富なバリエーションと確かなお味で、 60年にも渡り地元の方々に親しまれている老舗『味処 まんぷく』。富士河口湖を訪れた際は、是非ともその実力をご堪能ください。
味処 まんぷく
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町河口517-4 MAP
URL:https://ajidokoro-manpuku.com/
Credit
Photo_Yuki Araoka
Text_Kango Shimoda
Edit_Satoshi Yamamoto
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