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2024.01.31

ジェラート日本一の称号を引っ提げて 有馬温泉に新風を送るチャレンジャー

ネットワークの発達により、いまや世界中の情報がリアルタイムで手に入るようになった現代。ですがまだまだ日本には、みなさんが知らないスーパーなコンテンツが数多く眠っています。そんなまだ見ぬ地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画、『地域創生ローカルヒーローズ』。今回は日本三古泉のひとつとしても知られる有馬温泉を拠点に、さまざまな新規ビジネスに挑戦する仕掛け人、『有馬片山幹雄商店』4代目社長・片山圭介さんにお話を聞いてきました。

有馬片山幹雄商店 代表取締役
片山圭介さん

かの太閤秀吉にも寵愛されたとされる歴史ある名湯・有馬温泉にて、先祖代々受け継がれる老舗酒屋『有馬片山幹雄商店』の4代目。年に数回は国内外を旅行するという旅好きでありながら、行った先々でも常に新しいビジネスヒントを探してしまうというワーカホリックな一面も。

老舗の酒屋さんが日本一のジェラート屋さんに!

純和風の日本家屋が立ち並ぶ有馬温泉商店街。その景観にマッチする店構えでありながら、一歩足を踏み入れるとそこは、SNS映え抜群のモダンでオシャレな空間。そんな同商店街でも異色を放ちながら、2019年にはジェラート日本一にも輝いた大人気店『アリマ ジェラテリア スタジオーネ』を立ち上げた片山さんにインタビューを実施。
老舗酒屋の4代目社長が、ジェラート屋さんに行き着いた理由とは?

-ジェラート屋さんを始めたきっかけを教えてください。
「大学卒業後に少しだけ一般企業で勤めたあと、後継ぎとして『有馬片山幹雄商店』に入社したんですが、その当時の有馬温泉は今ほど活気もなくて、なかなか厳しい状況だったんですよね。と同時に、ずっと業務用の卸しをメインにやっていたせいで、もっと一般のお客様とも接したいという想いを、長年積もらせていたんです。そんな中でいまの『アリマ ジェラテリア スタジオーネ』の物件が空いたと聞いて、とりあえず借りよう、何をやるかは後から考えよう、と。それでさまざまな商材の中から選んだのがジェラートでした。2015年のことですね」。

-え、ちょっと待ってください。物件ありきの後付けでジェラート屋さんを始めたってことですか?
「そうなりますね(笑)。完全に素人の状態から始めました。本当は、どこかで作ってもらったのを仕入れて売ろうと考えていたんですが、メニュー開発の点とかオリジナリティの点とかで、ちょっとそれじゃ勝負できないな、と。
じゃあ自分たちで作れないのかな? ってことで、今度はジェラートの機械を作っているメーカーさんに問い合わせて、いろいろなお話を聞かせていただくうちに、これならできるかも、と思い決断しました」。

-決断力に驚かされます。とはいえ、2019年には日本一になってますよね? とんでもない努力があったのでは……。
「はい、2015年のオープンから2019年の大会までは、いま思い出しても相当に濃密な時間を過ごしましたね。極端にいうと、毎日毎日、本当にジェラートのことしか考えていなかったと思います(笑)。数え切れないほど試作品を作りましたし、当然イタリアにも行きました。4年という月日で考えると短いですが、そこにかけたカロリーは、ちょっと尋常じゃなかったと思います」。

ジェラート作りは超ロジカル! そして次なる挑戦に……

「ジェラートのレシピって、すごく数学的というか科学的というか、ロジックな要素が強いんですよ。このメニューにはこのフレーバーを何パーセント入れて、この砂糖とあの砂糖を何パーセントずつで、何度帯で管理する、とかね。そうやってすべてを数値化し、まるで計算式のように組み合わせて、データをもとに味合わせをしているんです。だけど私は昔から数学が好きだったので、これがとても面白くて。うまいことハマっていき、試行錯誤を繰り返しながら、なんとかレシピを開発していきました。いまでは砂糖だけでも10種類以上を適材適所で使い分けているんですよ(笑)」。

なるほど、たった4年で日本一に輝いたという実績は、そんな努力と元来の数学好きという側面が合致した結果だったんですね。
しかし片山さんの動きは止まりません。2022年には、有馬温泉で唯一のクラフトビール専門店『アリマ ブルワリー』をオープンさせます。

老舗酒屋の本領を発揮するクラフトビール専門店

「『アリマ ブルワリー』をオープンさせたのは、本当につい最近で2022年。ここは元から弊社で持っていた物件で、普通の酒屋として25年くらい営業していた場所だったんですが、老朽化もしてきたし、ちょっと惰性のような雰囲気も感じていたので、いっちょテコ入れしてやろうということでリニューアルオープンさせました。
それに私たちは『インターナショナルビアカップ2014』や『ワールドビアカップ2016』で金賞を受賞した『有馬麦酒』も持っていましたからね。この世界的に評価されたビールが生で飲める、有馬唯一のクラフトビール専門ブルワリーという形で打ち出せば、海外からのお客様にも若いお客様にも必ず刺さるだろう、という確信がありました」。

なお『アリマ ブルワリー』では、『有馬麦酒・ジャパンエール/ブラックエール/ホワイトエール』に加え、『六甲ビール ブラウンエール』も提供中。さらに地元の日本酒『有馬山』なども楽しむことが可能。
各所の食べ歩きも楽しい有馬温泉商店街巡りの際には、是非一度お試しいただきたいところです。

まだまだ続く『有馬片山幹雄商店』の飽くなき挑戦

そんな片山さんの挑戦は、上記2店舗だけにとどまりません。『アリマ ジェラテリア スタジオーネ』の隣には、同店でも提供されるスペシャリティコーヒーや瓶詰めの『有馬麦酒』などを取り扱う物販店舗『アリマルシェ』が。
さらに今回は撮影できませんでしたが、上述の『有馬麦酒』や、名物『ありまサイダー』を使用したモヒートなどが楽しめるお洒落バー『サンク バル ドゥ サケ』も運営中。
加えて2024年には自家焙煎コーヒーのカフェ、『ネロ コーヒー ロースターズ・有馬珈琲焙煎所』もオープンさせる予定だとか。

「ジェラートを出した2015年くらいからかな。年に1店舗ずつ増やしていこう、みたいな話で始めたんですよ。まぁ現実にはなかなかそうはいっていませんが、とにかくやりたいことが次から次へと出てくるんです。私自身、自分がこんなにやりたがりの性格だったとは知りませんでした(笑)。
でも一番やりたいのは、やっぱりジェラートなんですけどね。いずれは有馬以外の土地でも、うちのジェラートの美味しさを広めていきたいと思っています」。

歴史ある有馬温泉という地で、歴史ある老舗酒屋という母体を持ちつつも、さまざまな新事業に挑戦し続ける片山さん。その姿は、まさにローカルヒーロー。そんな片山さんの目線の先にあるものとは?

-有馬温泉に根付く老舗企業として、今後の目標は?
「うちがジェラート屋をオープンさせた2015年頃って、今みたいに商店街も賑わってなくて、けっこう閑散としていたんですよね。もちろんうちがきっかけになったわけではないけど、それから徐々に新しいお店も増えていき、今では上から下まで、商店街全体が息を吹き返していると感じています。
だからこそ私たちは、今この流れを逃さずに、もっともっと国内外からのお客様に満足いただけるように努力しなければならないと思います。
とはいえそれは、なんでもかんでも新しいお店を作れば良いという話ではなくて、あくまでもこの有馬温泉ならではの景観を守りつつ、というのが大前提。
そういった伝統的な部分も守りながら、有馬温泉が世界的な観光地になれるように、そして何度も繰り返し来ていただけるように、これからもいろいろな施策にチャレンジしていきたいと思っています」。

有馬で生まれ、有馬で育った片山さん。正直あまり客観視はできていないと言いますが、だからこそ、故郷にかける思いは強いはず。
伝統を守りながらも時代に合わせた発展を遂げる、これからの有馬温泉、これからの『有馬片山幹雄商店』に、OMUSUbeeは今後も注目していきます。

Credit
Photo_Yozo Yoshino
Text & Edit_Satoshi Yamamoto


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