2025.04.25
以前本メディアにてお届けした、タレント中山秀征さんの『ヴィラ・コンコルディア リゾート&スパ』宿泊記。そこで訪れた函館の街をふらりと歩いてみると、足が止まるような素敵なお店がぽつりぽつり。「なにこのセンス……」「お花屋さんなのにカフェ?」。そんな偶然の出会いから始まった、今回のローカル魅力発見旅。旅の本番は観光地だけじゃない。ふとした路地や小さなお店の扉の向こうにこそ、心が動く景色が待っているのかも。というわけで、函館の街角で出会った気になる2軒を、写真とともにじっくりとご紹介します。
目次
最初にご紹介するのは、お花とコーヒーのお店『cinq(サンク)』。白い外壁に淡いブルーの扉。アーティスティックな看板と風になびく飾り布。観光客が多く行き交う中心地から少し離れた静かなエリアに、ひっそりと、でも明らかに洗練された雰囲気を漂わせる、ひと目で“イイお店”とわかる佇まいです。偶然通りかかっただけなのに、吸い寄せられるように扉を開けてみたくなる。そんな不思議な引力をもった花と珈琲のお店。その魅力の理由を探るべく、さっそくお話を伺ってみることにしました。
店内に一歩足を踏み入れると、そこはまるでお花の楽園。白を基調とした空間にリズムよく並ぶ色とりどりの花々は、ひとつひとつがまるで作品のよう。それはただのディスプレイというより、アートギャラリーのような雰囲気に。ほどよく力が抜けていて、でもきちんと美しい。そんな絶妙なバランス感が、花とともに心地よく日常を過ごしたい人の気持ちに寄り添ってくれるよう。
「どんな花でも、並べていくと自然にまとまりができるんですよ」と語ってくれたのは、店主の大林さん。聞けばこちらの大林さんは、東京、ハワイ、パリで経験を積んだという、グローバルな視点を持った北海道出身のフラワーデザイナーさん。なるほど、どおりでセンスが良いわけです。
大林さんは語ります。「花屋って、花を買うときしか行かないじゃないですか。でも、もっと気軽に花と過ごせる場所があってもいいと思ったんです。お花を買わずとも、コーヒーを飲みながら花のある空間でひと息つける。そんな場所を目指して、花とコーヒーを融合させたこのお店を作ったんです」。
お店では基本的に、旬な花々を地元の仲卸業者から仕入れているそうですが、その品揃えは独創にあふれ、型にはまらない自由な顔ぶれ。「パリでは日常的に、お客さんが自由に花を選んで、自分らしい花束をつくっていくんです。あの感じがすごく好きで、今の店づくりのベースにもなっていると思います」。
その言葉どおり大林さんは、ブーケやアレンジメントの個人オーダーも行っているそう。「どんな方に贈るんですか?って、会話の中からイメージを一緒につくっていく。そういう時間が大好きなんです」。
そしてこの函館・末広町を選んだ理由について、大林さんはこう話してくれました。「やっぱり街並みがキレイなところに店を出したくて。札幌でも良かったんですけど、ここに来たとき、すごくピンときたんです。古い洋館や教会も多くて、好きなんですよね、この雰囲気が」。ちなみに『cinq』という店名は、フランス語で数字の“5”。そんな店名のとおり、ここはまさに五感に届くような空間。この小さな花屋には、大林さんが積み重ねてきた経験と、素敵な暮らしへの想いが静かに詰まっています。
次にご紹介するのは、前述『cinq』さんの3軒隣に居を構えるレザーショップ『OZIO(オジオ)』。ヨーロッパのブティックのようなシックな佇まいに、思わず足を止めたのが訪問のきっかけ。洋館チックな一軒家に、大窓を携えたヴィンテージ風の全面扉、さりげなく掲げられた小さな看板。何気ないのに、なんだか気になる。そんな存在感に惹かれてガラガラっと扉を開けば、そこは街の喧騒とは少しだけ距離を置いた、落ち着いた時間が流れる空間に。
その雰囲気は、街ブラ中にふらりと立ち寄るのにぴったり。ふと「誰かへの贈りもの、ここで選べるかも」と思わせてくれるような空気が漂います。
中に一歩足を踏み入れると、ふわっと革の香りがお出迎え。ヴィンテージ感あふれる店内には、大小さまざまなバッグから、財布や手帳、キーホルダー、そしてモダンなアクセサリーまで。アーティスティックなレザー製品が、所狭しと陳列されています。実はここ『OZIO』は、鞄作家の永嶺康紀さんが手掛ける同名ブランドのフラッグシップショップ。突然の訪問でしたが、スタッフの齊藤さんにお話を伺うことができました。
「永嶺は函館出身で、東京藝大で染織について学びながら鞄職人に弟子入りし、現在は鞄作家として活動しています。革をキャンバスとしたアートワークと製鞄技術を組み合わせた作品を制作しており、中でも動物をモチーフとしたシリーズが象徴的な作品となっています」。
そんな他所では出会えない作家性みなぎるアイテムは、まさに一期一会。旅の思い出品はもちろん、一生モノとなりえるお宝にも出会えるかも。
店舗奥の扉の向こうには、足踏みミシンや加工道具が並ぶクラフトスペースが。ここでは、スタッフさんたちが顧客対応の傍らで手を動かすこともあるのだとか。「私に限らず、ほかのスタッフもみなそれぞれ、ある程度のレザークラフト技術は持っています。ですからこちらの店舗では、お客さまからのちょっとしたカスタムオーダーも承っているんです。永嶺のアートワークをまとめたスワッチもご用意していますので、『この動物をこの商品に入れたい!』なども、お気軽にご相談ください」と斎藤さん。
また店頭には、さまざまな動物をモチーフにしたカラフルなキーホルダーなど、お土産にぴったりな小物ラインナップも豊富。函館観光でたまたま立ち寄ったお客さんが、気に入ってまとめ買いされることもあるそうです。
なおこちらの『OZIO』さんは、函館赤レンガ倉庫内に2店舗と、東京は蔵前にも店舗あり。ですがここ元町本店では、一点物の作品や限定品に出会える機会も多いそう。自分だけの逸品がほしい方は、この元町エリアまで足を運んでみる価値大いにアリです。
観光途中にふらりと立ち寄るのはもちろん、誰かへの贈り物を選びに訪れるのにもぴったりな『OZIO』。旅の記憶にそっと寄り添ってくれるような、キュートなレザーの動物たちを探しに行ってみてはいかがでしょう。
異国情緒ただようハイカラな街・函館で、思いがけず出会えた2つのセンスあふれるローカルショップ。どちらにも共通していたのは、丁寧に紡がれた世界観と、訪れる人をそっと受け入れてくれるようなやさしさでした。
いわゆるベタな観光名所や有名グルメもいいけれど、たまには街の空気を感じながら、こんな地元の名店を通じて、人に触れる旅もいいのでは?
函館の街をもっと好きになる、そんな小さな発見をくれるローカルスポット。次にこの街を訪れるときには、ちょっと寄り道してみてください。
あなたの旅の記憶に、いつまでも残る風景がきっと待っています。
cinq
住所:北海道函館市元町29-16 MAP
Instagram:@cinq_hakodate
OZIO本店
住所:北海道函館市元町29-14 MAP
URL:https://oziodesign.com/
Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text & Edit_Satoshi Yamamoto
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