2024.06.21
地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画『地域創生ローカルヒーローズ』。今回は、東京・奥多摩での森暮らしから生まれたライフスタイルブランド『waen』をクローズアップします。奥多摩の自然素材を使った道具を開発し、豊かに楽しく暮らしていくキッカケを提供する代表の菅原円香さんに、商品の開発秘話を通じて、奥多摩の魅力を伺いました。
「ちょっと特別な日常」をコンセプトに、奥多摩の素材を使った道具を開発する『waen』。カッティングボードやコースターといったさまざまな手作り木工品を通して、豊かに楽しく暮らしていくキッカケを提供しています。ブランドの始まりは、円香さんの旦那さまでもある『東京・森と市庭(いちば)』菅原和利さんとの結婚式で、ゲストの方々にプレゼントした引き出物からでした。 「せっかくだから地域の自然素材を使ったものを贈りたいね、という話になって、カッティングボードを作りました」と、はじめてのモノづくりに挑戦。廃業した材木屋に残っていた多摩産材を活用し、カットや削り、オイル塗装など、すべてを自分たちで手作りしました。
そんな『waen』のアイテムは現在、自社HPでの販売に加えて、カフェやお土産品販売などから成る奥多摩駅舎2階の複合ショップ『PORT OKUTAMA』でも展開中です。カッティングボードをはじめ、まな板やサシェ、入浴剤といったさまざまなアイテムが並び、実際に手に取って購入することが可能です。素材には、多摩産材のひのきや桜などを使い、いずれも一つひとつ風合いが異なる一点物ばかりです。「自然の木って本当に香りがいいですし、包丁が当たるときの音も心地いいんですよ。しかも天然の殺菌作用もあって機能的。そうした自然素材の魅力をもっと身近に親しんでもらえたら嬉しいですね」と菅原さん。丁寧に仕立てた木工品ならではの質感や香りが、いつもの食卓を品よく彩ってくれること請け合いです。また、使い込むほどに味わいを増し、それぞれ異なる表情で成長していってくれるので、愛着もひとしおです。木を触ったり、香りに癒されたり。自宅でふと自然を感じるひとときが、豊かな日常をもたらしてくれます。
多摩産材カッティングボードのほかにも、新しい奥多摩土産として「おくたまスモーク」を開発しました。「カッティングボードの上に乗せて食べるものを探しているとき、地域の小河内漁業組合で川魚の燻製を販売していることを知ったんです」。 同組合では以前から奥多摩ヤマメの燻製を作っており、その技術を活かして奥多摩で獲れるニジマスでの燻製を依頼しました。「出来上がりを食べたら、すっごく美味しくて、あっこれだ!って思いました」と、想像以上の味の良さに、奥多摩の新しい特産品としての可能性を感じたそうです。 美味しさの秘密は、手間暇を惜しまない燻製技術にあります。燻製に通常用いる木のチップを使わず、より香りがつきやすいよう奥多摩の桜の原木を使用し、じっくりと8時間燻製しています。そのため、川魚特有の臭みがなく、口に入れると驚くほど芳醇です。無添加で塩のみのシンプルな味付けが、魚の旨みを引き立てます。 「普段食べる機会が少ないニジマスをお土産品として提供することで、川魚を食べるキッカケになってくれれば嬉しいですね。喜んで食べてもらうことが、地域の新産業にもつながりますので」と菅原さんは語ります。土産物の開発だけでなく、地域産業の活性化にも貢献しています。
自然素材を活かしたり、特産品を開発したりと、地域の新しい魅力や産業の発展にも力を注いでいる菅原さん。彼女は地元出身ではなく、町外からの移住者です。だからこそ、奥多摩の魅力を新たに発見できると語ります。 「移住してきて感じたのは、地元の人にとっては当たり前にあるものや感じるものが、町外にはない宝物として眠っていることです。ニジマスをはじめとした川魚や、燻製の技術もそのひとつです。そうした魅力をどんどん再発掘していきたいですね」と、外からの目線で奥多摩の魅力を日々探し続けています。現在は地域の果物を使った「おくたまフルーツチップス」を計画中とのことです。 「町内を歩いていると、そこら辺に柿や柚子などの果物がなっています。でも地元の方にとってはそれが当たり前で、収穫せずそのままにしてしまうという話を聞くことがあります。それを目の当たりにすると、やっぱりもったいないと感じます。新しいモノづくりは簡単ではありませんが、移住者である私たちだからこそできることに挑戦して、奥多摩の魅力をもっと伝えていきたいですね」。 移住者だからこそ気づけること、作れるもの。『waen』のモノづくりを通して、知られざる奥多摩の魅力がより多くの人に届いています。
waen
店頭販売所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川210 JR奥多摩駅2階 PORT Okutama MAP
URL:https://www.waen.tokyo/
Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text_Takuya Kurosawa
Edit_Satoshi Yamamoto
▼関連記事