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2024.06.14

林業をエンタメ化!? 森と人の関わりをつくり、森の未来を守っていく『東京・森と市庭』

地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画『地域創生ローカルヒーローズ』。今回お話を聞きに行ったのは、東京・奥多摩を拠点に、木育商品・体験を提供する『東京・森と市庭(いちば)』。地元の木材を活かしたモノとコトを子どもたちに届けながら、奥多摩の森を守り続けています。取締役の菅原和利さん(写真右)と、生産管理部長の牛島一成さん(写真左)に、林業の新しいカタチや森のある暮らし、自然の未来について聞いてみました。

木育で目指す林業の新しいカタチ

東京都西多摩郡奥多摩町で産声を上げた『東京・森と市庭』。「森とあそび 木とくらす」をコンセプトに、奥多摩でゆっくりと育ったスギ・ヒノキを活かしたモノ・コトを子どもたちに届け、木育の機会を提供しています。「モノ」では原木の調達から製材加工を行い、制作・施工まで一貫して行った商品を。「コト」では社有林を活かし、林業体験や保育施設向けの木育遠足などを企画するなど、いち林業には見受けられない新しい活動が、今注目を集めています。

そうした活動の根底にあるのが、子どもたちへの想い。「無垢材の木製品や自然に触れることで、五感を開き、センスオブワンダーを磨いて欲しい」と菅原さんは話し、遊具を届けるだけではなく、どんな木や山からつくられているのかまでを、子どもたちに伝えています。
その一環として、例えば園庭に遊具をつくる場合は、現場に木材を持ち込み、園児たちに組み立てる様子を見てもらうように心掛けているそう。写真は同社が制作した「ケヤキのツリーハウス」。園庭にある大きなケヤキの木を活かした遊べるツリーデッキとして、子どもたちに大人気だとか。
「木から遊具が作られていることを知ってもらうことで、木への関心や遊具を大切にする心も育ってくれたら嬉しいですね」と牛島さんは語り、木からモノが生まれるストーリーまでを伝えています。

遊んでつくる林業のエンタメ化

遊具を提供するほかにも、次々と新しい施策も発信中。そのひとつが、木と森を使った遊びと学びの祭典「モクリンピック」という独自の運動会の開催。間伐体験や丸太転がしなど、普段は経験できない山林の仕事をゲームに仕立て、楽しく自然を学べる体験を子どもたちに提供しています。
「林業は木材を売るだけでは前に進めません。森の価値を伝えると同時に、もっとたくさんの方々に森や木を楽しんでもらうための林業のエンタメ化を模索しています」と菅原さん。そうしたプログラムを生み出すためには、まずは自分たちが森や自然とよく遊ぶことが大切とも話します。
「子どもたちに提供するのは基本的に遊びですから、自分たちが遊び心を忘れていると、いいプログラムは生まれません。モノをつくる際も、売れる売れないだけで判断せず、自分が楽しいと思えたかどうかを重視します。そうした想いのあるモノが、やっぱり子どもたちに喜ばれるんですよね」と牛島さんは笑顔で答えてくれた。

最近では、アングラーズマイスター初代MVPという称号も持つ菅原さんが中心となり、木製ルアーを開発中だとか。ほかにも、東京でサクラマスの復活を目指すプロジェクト『TOKYO SAKURAMASU』を立ち上げ、森を通して水辺とつながるワークショップを開いたり、スポンサーであるアメリカ発の『Hydro Flask』との共同で奥多摩にサクラマスを増やす活動を展開するなど、さまざまな遊びや他社との協業からも、新しいモノ・コトの拡充を図っています。

都市生活者に自然と触れ合うキッカケを

さまざまな施策で木育を提供し、子どもたちが自然を感じる感性を育む『東京・森と市庭』。その想いを地元のみならず、東京という大きな枠でも届けたいと考えているそう。それは例え森が少ない都会でも、考え方ひとつでセンスオブワンダーは磨かれると考えているそう。

「都市と奥多摩では、森のスケールこそ違いはありますが、奥多摩の森でも、近所の公園でも、実際に自然と触れ合うという意味では、さほど差異はないんです。大事なのは、子どもたちが自然と触れ合えるキッカケを与えてあげること。興味を示したらその好奇心に付き添ってあげること。大人も楽しく子どもの目線で一緒に過ごすだけで、子どもの感性は育まれるはずです」とお二人は語り、また自然を考えるキッカケに、決して特別なことは必要ないとも言います。

「一緒に公園で走ったり、小さな枝を拾ったり、小川を見たり。ただ遊び心を持って一緒に過ごすことが、子どもたちにとって自然を楽しむキッカケになるはずです。それさえ作ってあげれば、子どもは自らどんどん成長をしてくれますから」と、都市生活者においても、自然を考える機会は等しくあると教えてくれました。

写真は『東京・森と市庭』のオフィスにて。あちらこちらに楽しそうな木工作品が散らばっていて、スタッフみんなが遊び心を持って取り組んでいることが伝わってきます。また菅原さん著者『自分の地域をつくる』には、創業メンバーならではの会社が出来るまでのお話や、奥多摩の暮らしについてに書かれていますので、興味ある方はぜひご一読ください。

子どもたちの感性を育み、森の未来を守る

子どもたちの「センスオブワンダー」を磨く。それは、自然との遊び方を知るだけではありません。子どもたちが自然と共に生きている実感にも繋がっていくと、二人は考えています。
「今の子どもたちは自然との触れ合い方とは別に、森林破壊や地球温暖化など、さまざまな環境問題に対して、とても距離が遠いと思っています。言葉は聞いたことがあってもリアルには感じられない。そうした問題を含めて、自然を感じる感性を磨いて欲しいですね。人間は間違いなく自然と共に生きており、遊ぶだけでなく、守っていくことも大事ですから」。また自然との育みが、生き方や価値観にもいい影響を与えてくれると語ります。
「自然を大切にする気持ちは、普段の生活でも好循環が生まれるはずです。例えば、モノを大切にしたり、美しさを覚えたり、感謝の気持ちを表したり。そうした生き方そのものが地球を守ることにもつながっていくのではないでしょうか。そのためにもまずは私たちが先頭に立ち、子どもたちに誇れる未来を、森と共につくっていこうと思います」。

失われつつあった、木と共に生きる日本の文化を育む『東京・森と市庭』。木育をはじめとした彼らの活動により、森に気軽に遊びにいくというライフスタイルがきっと広まっていくはず。みなさまも機会があれば一度、奥多摩の森へ行ってみてください。そこには自然と共に生きる喜びが待ち受けています。

東京・森と市庭(いちば)
住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川1075 MAP
URL:https://mori2ichiba.tokyo.jp


Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text_Takuya Kurosawa
Edit_Satoshi Yamamoto


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