2024.06.28
OMUSUbeeが手掛ける〈BLEND IT TRADITION〉プロジェクトは、伝統工芸と現代アートの融合を目指す試みです。これは、現代アーティストと伝統工芸の職人たちが協力して、新たな価値を生み出すための革新的なプロジェクトです。今回は、ゲストアーティストとして参加した須田悠さんに焦点を当て、その創作背景とアートに込められた深い想いを掘り下げていきます。
アーティスト/須田 悠さん
1985年、東京都多摩市生まれ。日本人としてのアイデンティティを探るべく、先人たちとの精神的な繋がりを求めながら、日々思いつく頭の中にある恒常性の欠落した世界観を表現。インディペンデントなアパレルブランドからナショナルブランドまで、多種多様なクライアントにアートワークを提供する。
Instagram:uyudas
須田さんの作品は、日本の伝統的な風俗画である浮世絵をモチーフにしています。大学時代に初めて浮世絵に出会い、その独特な価値観と美的感覚に強く影響を受けた彼は、それ以来、浮世絵を中心にした作品を制作しています。浮世絵は、彼にとって単なる歴史的な芸術作品ではなく、現代の感性を加味した新たな表現手法としての位置付けを持っており、その中には現代社会への風刺や皮肉も含まれています。
「幼少期から絵を描くことが好きでしたが、浮世絵に触れることで、自分の中の美的感覚が一新されました。特に、湾曲した線や意図的な不均衡のバランスが、新しい美しさを感じさせてくれたのです」。
その後、彼がオーストラリアでのワーキングホリデーを経験したことで、日本人としてのアイデンティティを強く意識するようになり、それが彼の作品の主要テーマとなりました。
「海外での生活を通じて、日本文化の特異性とその価値を改めて認識しました。これがアートを通じて表現する原動力となりました」。須田さんの作品には、伝統的な浮世絵のタッチに加え、現代の社会問題を風刺するユーモアや機知が巧妙に織り交ぜられています。この融合が、彼のアートをさらに多面的で興味深いものにしているのです。
今回の〈BLEND IT TRADITION〉プロジェクトでは、石川県の伝統工芸「九谷焼」とのコラボレーションが実現しました。九谷焼は、その鮮やかな色彩と細やかな絵付けで知られ、日本の陶磁器の中でも特に芸術性が高いとされています。須田さんは、現代的なアートの要素を取り入れながら、九谷焼に新たな命を吹き込むことを目指しました。今回のプロジェクトでは、須田さんがデザインしたカエルのキャラクターが九谷焼の陶器に描かれ、伝統と現代が見事に融合した作品が誕生しました。
「九谷焼という歴史ある工芸に現代的なキャラクターを融合させることで、新たな価値を生み出したいと考えました。伝統工芸には堅苦しいイメージが付きまといがちですが、もっと親しみやすく、身近に感じてもらえるようにしたいと思いました」と須田さんは語ります。製作を担当したのは、1972年創業の「宮吉製陶」。この窯元は、伝統を守りつつも、現代のライフスタイルに適応した新しい提案を行うことで知られています。今回のコラボレーションも、その革新的な取り組みの一環です。
須田さんの作品を通じて、九谷焼が持つ伝統的な美しさと現代的な感覚が見事に融合し、新たな価値が生まれています。このプロジェクトは、伝統と現代が交わることで生まれる新たな表現の可能性を追求しており、須田さんが目指す「新たな価値の創造」というテーマが見事に反映されています。彼の作品は、単なる装飾品としてだけでなく、時代を超えて伝わるメッセージを内包しています。
須田さんは、幼少期から家庭で日常的に使われていた伝統工芸品に触れることで、美的感覚が自然と育まれました。「伝統工芸品の美しさは、単なる物質的なものとしての価値を超え、心に深い喜びをもたらしてくれるものです」。彼はその経験から得た感覚を、次世代にも伝えていきたいと強く願っています。
「子供たちにも、良いものを使うことで得られる喜びを感じてもらいたい」と須田さんは語ります。彼のデザインしたカエルのキャラクターは、次世代へのメッセージを込めた象徴的な存在となっており、その愛らしい表情やユーモラスな姿は、子供から大人まで幅広い世代に受け入れられています。また、こうしたキャラクターを通じて、伝統工芸の美しさやその背景にある文化的価値を、次世代に伝えるための重要な役割を担っているのです。
今回のコラボレーションは、須田悠さんのアートを通じて、日本の伝統工芸に新たな視点を与えました。この作品は、日常生活の中で新しい価値を見出すきっかけとなるでしょう。ぜひ、このアイテムを手に取り、須田さんが表現する「新しい伝統」の魅力に触れてみてください。須田さんの作品は、過去と現在、そして未来を繋ぐ重要な架け橋となり得るのです。
Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text_Takuya Kurosawa
Edit_Satoshi Yamamoto
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