2025.05.02
暮らしと健康にまつわるアレコレを、さまざまな角度から紐解く連載企画〈HESTA LIFE的健康道 – Be Wellness!〉。今回は、和歌山県白浜のオーシャンビューホテル『ザ グラン リゾート エレガンテ白浜』で行われた、断食(=ファスティング)と運動を組み合わせた3泊4日の減量プログラム『スピードファスト』体験ツアーを潜入レポート。ファスティングとトレーニング指導のプロである藤田修一さんと、参加者たちが過ごした時間をお届けします。
ツアー監修/講師
藤田修一さん
学生時代はサッカーに打ち込み、スポーツ専門学校卒業後スポーツトレーナーへ。以来、約30年という時間の中で、オリンピアンやプロ野球選手など、多くのトップアスリートも指導。コンディショニング領域を中心に、運動/姿勢/栄養指導、整体など、身体機能を全般的にケア。15年ほど前から個人的にファスティングに取り組み、断食と運動を組み合わせた『スピードファスト』考案。知人を中心に、2020年より一般向けにもサービス提供を開始。
目次
今回のファスティングツアーの舞台となるのは、ワイキキビーチの姉妹浜、白良浜を望む『ザ グラン リゾート エレガンテ白浜』。ファサードにもロビーにも南国感あふれるこのエレガントなリゾートホテルで、3泊4日のファスティング体験が始まります。
スケジュールはこんな感じ。いつも藤田さんが提供している『スピードファスト』のプログラムは6泊7日がベーシックだそうですが、今回はあくまで体験プランということで、3泊4日のショートバージョンで実施。とはいえ事前に共有された参加要項には、「前日の夕飯から食事を抜いてください(or 軽め)」との記載が。ということは実質的な断食期間は、4日間ほぼ丸々。しかもその間に、体幹トレーニングやテニスなどの運動プログラムもあり。果たして耐えられるのでしょうか……。
今回は『大倉クラブ&ホテルズ』でも初の試みとなるプレオープンツアーということで、参加したのは撮影チーム含めた関係者4名。…とはいえ、私たち撮影チームはスケジュールの都合で1泊2日のみのウルトラショートプログラムに。最後までしっかりレポートできないこと、あらかじめご容赦ください。そんな前置きはさておき、まずは藤田さんによる座学からツアースタート。
「ファスティングとは、ただ食べないだけではなく、代謝のスイッチを切り替えるということ。食事を断つことで、糖代謝から脂質代謝へと移行し、体内でケトン体という代替エネルギーがつくられます。これが細胞の自己修復を促す“オートファジー”を活性化させてくれるんです」。
とはいえ、4日も何も食べずにいられるの?と不安になりますが……。
「実際、思ったより空腹感は少ないですよ。なぜなら空腹感って、糖質による血糖値の乱高下が原因で、脳の働きによって起こることが多いんです。だから糖を摂らなければ、無駄な空腹感の波は来ない。それに水や炭酸水はいくら飲んでもOK。水分をしっかり摂っていれば、案外普通に動けるものなんです」。
なるほど、そういう仕組みなんですね。科学的根拠に基づいた説明を受け、すこしだけ安心した参加者たち。他にも、身体機能の話や食事と栄養の話、姿勢の話など、健康にまつわるさまざまな話を聞いているうちに、あっという間にガイダンス終了。最後は個々人の体組成などを計測し、いよいよプログラム本編へ。
ガイダンス終了後、各自チェックインを済ませてひと息ついたら、『スピードファスト』の肝、トレーニングタイム。舞台となるのは同ホテルの最上階に位置するジムスペース『リコンディショニングルーム 彩星』。眼下に白良浜が広がる絶景を見ながら汗を流せると評判の施設ですが、正直、そんな余裕はなし……。普段それほど運動していない参加者たちからは、思わずうめき声が漏れ出る程度にはハードめなトレーニングが行われます。
トレーニングで体を酷使した後は、白浜最古の源泉から天然温泉をかけ流す、『ザ グラン リゾート エレガンテ白浜』自慢の大浴場でリトリート。関節痛などにも効果ありという泉質は、まさにトレーニング後のひとっ風呂にうってつけ。ジャグジー、寝湯、サウナも備え、全身の力がふっと抜けるような心地よさに、思わず歓喜のため息がこぼれます。
お風呂の後は、この日の最後のプログラム。参加者それぞれ藤田先生のお部屋にお邪魔して、トップアスリートにも施しているという整体を受けます。整体と聞いて、「関節ボキボキ系のハードなやつ……?」と少々身構えていたのですが、これが予想外。
まずは軽やかな手つきで全身を触診し、もっとも矯正が必要な箇所をピタリと見極めたかと思うと、「これで効くの?」と思うほどソフトに施術。ところがその直後、見違えるほど可動域が広がったり、左右のバランスが整ったりと、その違いは明らか。参加者全員が本気で驚く、まるで魔法のような整体を施してもらいました。
最後に、この日唯一のカロリー摂取となる、コップ1杯の大豆ペプチドプロテインをゴクリ。甘みのないきな粉のような素朴な味も、断食効果で普段以上に美味しく感じることだできました。これにて1日目のプログラムは終了です。
2日目の朝。本来であればこの日もノーカロリーの予定でしたが、本日夕方には帰路につく撮影チームのために、特別に回復食の一部を前倒しでご提供いただきました。まずは、本来は3日目の朝に予定されていたグリーンスムージーから。小松菜をはじめとする葉物野菜をベースにした1杯は、まさに体の隅々に染み渡るような爽やかなおいしさ。ぎゅっと絞った柑橘の酸味がアクセントになって、思わず「明日も飲みたい……」と感じるほどでした。また3日目の夜には湯豆腐が、4日目の朝には5分粥が提供される予定です。
「回復食こそがファスティング成功のカギなんです。断食中に休んでいた胃腸に、いきなり普通の食事を与えてしまうと、消化が追いつかず、せっかく整った代謝のリズムが乱れてしまうことも。だからこそ、段階的に慣らしていくのが大切。特に1食目は、水分が多くて消化にやさしいものがベスト。豆腐やスムージー、お粥などを選ぶことで、体がゆっくりと食べるリズムを取り戻していくんです」と藤田さん。
昨日と同じく、まずはトレーニングルームでストレッチと体幹トレーニングからスタートした2日目。その後、近隣の屋外テニスコートに移動しての軽いラリータイム……。のはずが、この日はあいにくの雨模様。「まぁこれくらいの小雨ならいけるっしょ!」とポジティブに開始したものの、ほどなくして雨足は本格化。サーブを打つころにはすでにびしょ濡れで、無念の撤収となりました。
ホテルへ戻ったあとは、3日目に予定されていた呼吸法のレッスンを前倒しで実施。なんでも藤田さんは、若い頃に訪れたインドにて、かのサイババの道場で瞑想体験をしたこともあるとか。アーユルヴェーダや断食などの学びも独自に深めながら、「呼吸はすべてのコンディショニングの基本」との考えのもと、スポーツ選手や一般の方に向けた指導にも取り入れているそう。
この日行われたレッスンでは、深く長い呼吸を意識し、自律神経を整えるためのリズムを丁寧にレクチャー。会場には次第に静かな集中の空気が流れ、参加者の表情にも柔らかなゆとりが生まれていたとかいなかったとか。
といったところで、撮影チームはタイムアウト。たった1泊2日でしたが、その効果はいかに。半信半疑で結果を計測してみると、なんとフォトグラファーN町氏、体重2kg、体脂肪率1.5%、腹囲4cmのダウンを実現! しかも筋肉量はほぼ変わらず。曰く、期間中は特に大きな空腹を感じることなく、トレーニングやテニスの際もエネルギー不足とは思わなかったそう。この短期間でこれだけの効果があるなら、みなさんも、とりあえずお試しでやってみても良いのでは? トレーニングとデトックスの効果は、時間一律に比例するわけではないのかもしれません。
一方こちらは、途中で逃げ出した我々撮影チームとは違い、3泊4日、きっちり最後までやりきった参加者のひとり、O坂田さん。後日談とはなりますが、今回のファスティングツアーに参加した感想を伺いましたのでお届けします。
「初めは空腹感や体力面で不安でしたが、実際に体験を重ねるうちに解消され、非常に有意義な時間を過ごすことができました。初日以降は思ったほど空腹感に苦しむこともなく、落ち着いた精神状態を保てたと思います。普段から運動不足を感じていたため、腕立て伏せなどの簡単な運動にも戸惑いがありましたが、取り組むうちに頭が冴え、心身ともにリフレッシュできたと感じています。毎日の体重や腹囲の計測により、体の変化が目に見えて認識できるのも、大きな励みとなりましたね。夕方に受けた整体では、驚くほど体が軽く感じられ、日常生活での動作もスムーズになったことが印象深かったです。
それと、3日目の朝にいただいたグリーンスムージーがとにかく美味しくて、健康への意識を改める良い機会となりました。シンプルな1杯でしたが、あの味わいは忘れられません。
今回のファスティング合宿を通じ、身体の変化とともに心身の健康の大切さを改めて実感することができました。これを機に、日々の生活でも運動や食事に気を配り、より健康的なライフスタイルを目指していきたいと思います」。
そんなO坂田さんの結果は、体重3.8kg、体脂肪率1.7%、腹囲なんと7cmのマイナスを記録! お見事です。
以上で今回のツアーレポートは終了。最後に、藤田さんの言葉で締めさせていただきます。
「ボクがファスティングに出会ったのは、今から15年前くらい。当時からプロアスリートのサポートをしていて、選手たちのパフォーマンスを最大限に引き出すにはどうしたらいいか、トレーニングや栄養管理、休息の取り方など、あらゆる角度から身体と向き合っていたんです。そんな中でたどり着いた、もっともシンプルで根本的な手段のひとつが、内臓を休めることでした。
そこからファスティングに興味を持って、まずは自分で何度も実践し、断食寺みたいな場所にも行くようになっていくうちに、これは単なるダイエットや美容目的じゃない、身体の調律としての意味があるんだと確信するようになりました。つまりファスティングとは、身体をゼロベースにリセットするためのメンテナンスなんです。だから必要以上に難しく捉えずに、身体を整える手段として、もっと気軽に向き合っていいと思うんですよね」。
ただそうは言っても、仕事や家庭のある日常生活の中でファスティングを取り入れるのは、なかなかハードルが高そう。
そう尋ねると、藤田さんは穏やかに笑って、こう語ってくれました。
「断食って聞くと、やっぱりストイックで大変そうな印象を持たれがちですよね。だけど実際にやってみると、『あれ、意外と平気かも』ってなる人がほとんどなんです。水分さえ取っていれば1周間くらいは全然動けちゃうし、何より、やらされてるんじゃなくて自分で選んで整えてるっていう感覚があるから、すごく前向きになれるんですよ。頭もすっきりしますしね。
実際、うちの会員さんたちの中には、ファスティングを月1回の習慣にしてる方もいます。ほとんどが経営者の方々ですが、みなさん普通に仕事をしながらだったり、子育てしながらだったり、全然特別な人じゃない。そうやって非日常を少しずつ日常にしていく。その入り口として、今回のような体験ツアーがあったらいいなと思ったんです。楽しみながら、ゆるやかに整える。そんな時間が、人生のどこかでふと役立ってくれたら、すごく嬉しいですね」。
こうして幕を閉じた3泊4日のファスティング体験ツアー。私たち撮影チームは1泊2日の超ショートバージョンでの参加となりましたが、それでも十分に、数字が示す確かな効果、そして身体が整う感覚を実感することができました。
ただ食べないだけではなく、空腹感の仕組みを理解し、食事のあり方を考える。無理のない運動をとおして、自分の身体の声に耳をすませる。そして、深い呼吸を通じて、心のノイズを手放していく。
そんな風に、身体と心、どちらにも寄り添うこのツアーはまさに、現代を生きるためのリセットの時間。減量だけが目的ではない、一歩先のファスティング。みなさまも是非一度体験してみてください。
Credit
Photo_Shuhei Nomachi
Text & Edit_Satoshi Yamamoto
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