2023.04.27
みなさん、規格外野菜ってご存知ですか? それは読んで字のごとく、傷や変形などの理由により、一般流通商品としての規格から外れてしまった野菜のこと。とはいえ、ひと皮むけば中身は同じ。味にはまったく問題ないんです。そんなスーパーなどの店頭には並ばない規格外野菜を箱詰めにして、日本一の青果市場である大田市場から一般家庭へとお届けするサービス、『みたあじ』。その運営元である東京促成青果株式会社の社長さんにお話を伺うため、大田市場に行ってきました。
OMUSUbee 食の案内人
SHOKU IKU MONSTER
野菜や果物などと言葉が交わせるというモンスター。特に個性豊かな農産物と一緒にいると言われており、彼らを大切にしてくれる方々が大好き。個性を認め合うこと、食べ物を粗末にしない心など、その生態から教わることはとても多く、食育の象徴として、様々な文献にも度々登場している。当サイトOMUSUbeeでも、食にまつわる企画のマスコット役を買って出てくれた優しい子。
ここは東京都中央卸売市場の一角、大田市場。青果物、水産物、花きを取り扱う、東京都大田区の臨海エリアに居を構える総合市場です。そんな東の大台所から全国のご家庭へ、規格外野菜をお届けするサービス『みたあじ』。フードロス削減が叫ばれるこの時代だからこその取り組みなんだろうけど、果たしてその実態は? そこのところを聞き出すため、個性派野菜サポーター、食育モンスターくんと潜入取材をしてきました。
目次
東京都大田区の臨海地域に、東京ドームおよそ8.5個分、約40万平方メートルにも及ぶ広大な敷地を持つ大田市場。計11箇所ある東京都中央卸売市場の中でも、No.1の敷地面積を誇る超ビッグな卸売市場です。特に青果の取り扱い量は、堂々の日本一。1日あたり3875トン、金額にして11億8000万円分(令和3年調べ)もの野菜や果物が取引されています。となると当然、ちょっとカタチがいびつだったり小さな傷があったりなどの規格外野菜も大量に出てくるわけで、その行き先も気になるところ。
大竹康弘さん
(東京促成青果株式会社 代表)
規格外野菜宅配サービス「みたあじ」の運営母体にして、昭和23年創業の老舗青果仲卸企業、東京促成青果株式会社の3代目社長。祖父の代から続く家業を継いで20年。学生時代からターレットトラックやフォークリフトを乗りこなし、卒業後すぐに同業界に飛び込んだという、青果仲卸のサラブレッド。
全国から集まった農産物の出荷作業の中で、毎日必ず出てしまう規格外野菜。もちろん、どのくらい規格から外れているかはまちまちですが、その多くは、食べる分にはまったく問題のないモノばかり。
『みたあじ』は、そんな見た目が少し個性的だというだけで行き場を失ってしまった野菜や果物を箱に詰め、大田市場から一般家庭に直送するネットショッピングサービス。まさに今のSDGs時代にもぴったりですが、果たしてこのサービスは、いつどのようにして、どんな想いで始まったのか。その発案者であり運営リーダーでもある大竹さんにお話を聞きました。
大竹さん「昔から気にはなっていたんですが、明確に規格外野菜をどうにかしなければと意識したきっかけは、いまから5年程前に立ち上げた『シェフード』という一般社団法人の存在が大きいですね。その活動のメインテーマのひとつとして、地産地消という考え方にフォーカスしているんですが、生産者さんや地域と密になればなるほど、規格外野菜の問題にぶち当たるんです。当時はSDGsなんていう言葉も知りませんでしたが、やっぱり純粋にもったいないじゃないですか。だから私たちもできる限りの幅を持って仕入れるようにしながら、それら規格外野菜をどうやって売るのか、ずっと工夫を続けていました。そういった試行錯誤の中で、ひとつの大きな手段として外食産業への卸売というルートを確立したんですが、タイミング悪くコロナ禍が始まり、多くの外食産業がストップしてしまったんです。じゃあ今度はどうしようかって考えた時に、BtoBがダメならBtoCに切り替えようということでスタートしたのが、いまの『みたあじ』。コロナが流行りだしてからちょうど1年が経ったくらいのことで、私たちとしても、実はけっこう苦肉の策でした」。
皮肉なことに、コロナ禍があったからこそ生まれたという『みたあじ』。しかしその結果として、規格外野菜をどうにかしたいという大竹さんの考えが一般消費者にまで伝わったという点では、社会的な意義があったと言えるのではないでしょうか。個性派野菜サポーターの食育モンスターくんも、そういった話には興味津々。彼は食べ物を粗末にしない人が大好きなのです。
大竹さん「まぁ社会的な意義ってほど重たくは捉えていないんですけどね。でも単純に、せっかく農家さんたちが作ってくれた大切な食材を、私たちの商習慣の中で勝手に決めた規格に当てはめて、これは売れる、これは売れない、とかってわけるのは違うんじゃないかな、とは思いますね。そもそも青果物って消費期限があるわけではないし、若くて硬めのキウイが好きな人もいれば、熟した柔らかめのキウイが好きな人もいるじゃないですか。それと同じで、見た目も完璧に美しい野菜じゃなければ嫌な人もいれば、どんなにカタチが悪くても料理してしまえば変わらないんだから、安いほうがいいって人もいる。そういう方々をターゲットにすれば、いままで規格外だからといって捨てられていた野菜や果物も売ることができるし、それがフードロス削減にも繋がりますよね」。
大竹さん「少しリアルな話をすると、いまうちの会社では年間で8,000万円分ほど、規格外などの理由でロスが出ているんですね。だけどその内の半分弱くらいは、『みたあじ』の売上で相殺することができています。当面の目標は、この8,000万円のロスを『みたあじ』ですべて消すこと。逆に重さでいうと、年間500トンくらい廃棄しているのかな。もちろん中には規格外野菜としても売れない本当の傷モノもあるし、そういったモノは発酵分解装置に入れて肥料化する取り組みも行っていますが、やはり廃棄を完全にゼロにすることはできないんですよ。
だけど仮に半分まで削減できたとしたら、年間250トンですからね。これはなかなかの数字だと思いませんか? そのためには、いまはとにかく会員数を増やすことが大切だと考えています。幸い、ご購入いただいている方々からも大変好評をいただいていて、ユーザーさん同士の横の繋がりも生まれてきています。SNSでは自然発生的に『みたあじ』コミュニティができていて、みなさん届いた野菜を使った料理写真やレシピなどをアップしながら、自由にコミュニケーションを取られていますね。特にうちの場合は市場に届く無数の規格外野菜の中から、その時々の旬だったり個々の状態だったりを鑑みながらプロ目線で選んで箱詰めしているわけですから、毎回どんな食材が届くのかわからない。そういった面も含めて楽しんでいただけていると思っていますので、引き続きお客様のベネフィットを最大化していくことが、会員数の拡大に繋がると考えています」。
これまでも規格外野菜を提供するサービスは存在していましたが、『みたあじ』のスゴいところは、それを手掛けているのが青果仲卸のプロフェッショナルであり、その現場が日本一の青果市場であるということ。そんな青果のフードロス問題にイノベーションを起こす大竹さんに、『みたあじ』として、そして日本の仲卸業者の老舗として、今後どんな展望を抱いているのか聞いてみました。
大竹さん「食べ物に関わる人間として、やっぱりフードロス削減というのは、業界全体で取り組んでいかなければならない大きな課題だと感じています。そういう意味では、『みたあじ』のようなサービスが仲卸業界全体に広まってくれれば嬉しいですし、そのノウハウの共有を惜しむつもりもありません。そして私たち自身がそういった新しいチャレンジのまとめ役となれるよう、これからも成長し続けていきたいですね」。
日本一の青果市場に集まる規格外野菜を集めた野菜宅配サービス『みたあじ』を、OMUSUbee限定でアレンジ。通常の『みたあじ』よりも果物の割合を増やしたスペシャルセットを、大田市場からご自宅まで直送します。