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2025.08.07

老舗塗箸メーカー『マツ勘』が掲げる
お箸をとおした未来の“わくわく”づくり

福井県小浜市に本社を構える塗箸メーカー『マツ勘』。1922年の創業から100年以上、地域の伝統工芸である『若狭塗箸』の製造と販売に携わってきたこの老舗企業は、伝統を守りながらも、新たなビジョンのもとに“未来の箸づくり”に挑んでいます。その軸にあるのが、箸で”わくわく”をつくる! という言葉。これは、お箸を手にする使い手に対してだけでなく、つかう人、つくる人、はたらく人など、お箸に関わる全ての人に向けられた思いです。「自分たちの手で“わくわくするもの”を届けたい」。そう語るのは、『マツ勘』のクリエイティブディレクター・堀越一孝さん。製造業という枠を超え、未来のわくわくを届けるその想いをご紹介します。

塗箸の産地・小浜で続く、100余年の歴史

老舗塗箸メーカー『マツ勘』

本社がある福井県小浜市は、全国の塗箸の約7割を生産する“箸のまち”。1922年からこの地に根ざす『マツ勘』は、地元の職人たちと連携しながら、『若狭塗箸』の技術を守り継いできました。現在では国内外への幅広い展開も視野に入れ、多彩なデザインと高い品質で、自社ブランドやOEM、家庭用やギフト用、ホテルや旅館向けまでと、幅広い用途に対応しています。

『マツ勘』のクリエイティブディレクター・堀越一孝さんと編集部
箸を筆頭に、様々なデザインや用途の日用品が並ぶGOSHOEN。

これまでの100年から、これからの100年を見据えたビジョン

『マツ勘』のクリエイティブディレクター・堀越一孝さん

箸で創る“わくわく”に込められた思い

『マツ勘』が掲げる、箸で“わくわく”をつくる! という言葉には、100年企業としての新しい使命が込められています。それは、商品を届ける相手だけでなく、つくる側、はたらく側、それぞれの立場で感じられる“楽しさ”や“誇り”を大切にしたいという考えです。
「わくわくとは、心が動く瞬間。私たちは、箸づくりに関わるすべての人にその瞬間を提供したいと考えています」と堀越さん。この言葉は社内でも共有され、“100年ビジョン”として企業活動の軸になっています。

GOSHOENにて。日々の生活に馴染む箸から工芸を楽しむ箸まで様々。
日々の生活に馴染む箸から工芸を楽しむ箸まで様々。

「お客さまの“わくわく”に応えるためには、まず自分たちが“わくわく”しないといけない」と語るその根底には、伝統工芸や産業に先行する、お固いイメージを払拭したいという思いがあるそう。“わくわく”という前向きな言葉を使うことで、自分たちのクリエイティブをもっと楽しいものにする。それが『マツ勘』の目指す“ものづくり”です。

GOSHOEN(護松園)

新しいものづくりも、未来のまちづくりも

こうした“わくわく”を、お箸づくりの現場だけでなく地域社会にも広げようという試みが、『GOSHOEN(護松園)』プロジェクトです。2021年にオープンしたこの場所は、県の有形文化財をリノベーションした複合スペース。箸の展示・販売やワークショップ、定期的なマーケットイベンドなどを通じて、観光客や地域の人々が集える交流拠点になっています。

「『GOSHOEN』は、未来のシンボル。と語る堀越一孝さん

「『GOSHOEN』は、未来のシンボル。製品だけでなく、コミュニティを提供していく企業でありたい」。その言葉どおり、『マツ勘』はモノをつくるだけでなく、人が集まり、気持ちが交差する“場”も提供したいと考えています。これからの100年を考えるとき、ものづくりとまちづくりを一体として考えること。それこそが、彼らの新たな挑戦なのです。

伝統工芸の若狭塗を未来に紡ぐ

古川若狭塗店4代目の古川勝彦さん。現在では数名となってしまった希少な『若狭塗』の伝統工芸士。

若狭の美しさを描いた伝統の模様

伝統工芸『若狭塗』の魅力は、何層にも漆を塗り重ねてから丁寧に研ぎ出すことで現れる独特の文様です。その模様には、若狭湾の海底に描かれる太陽の光と波の模様など、自然の風景が抽象的に表現されています。さまざまなお箸をつくる『マツ勘』の自社ブランド『箸蔵まつかん』では、そうした伝統も大切にし、地域の風土を感じられる模様を丁寧に、1本1本仕上げています。手にしたときに、どこかほっとする。それは、箸の中に“風景”が宿っているからかもしれません。写真は、『古川若狭塗店』4代目の古川勝彦さん。現在では数名となってしまった希少な『若狭塗』の伝統工芸士です。

伝統美を現代に拓く新プロダクト<rankak>

<rankak>は、『若狭塗箸』シリーズの中でも、新しい代表作と呼べる存在。伝統的な技法のひとつである『抜き模様』を用いており、今の食卓に合うように再構成した、現代に若狭塗の美しさを拓く箸になっています。
卵の殻が生み出す繊細な模様は、何層にも漆を塗ってから丁寧に研ぎ出して生まれたもの。同じ工程でも1本ごとに異なる表情が出るため、世界にひとつだけの“景色”が手の中に広がります。国内外から高い評価を得ており、伝統美の新しい可能性を表現した意欲作です。

箸の製造工程を覗き見

『マツ勘』のものづくりは、丁寧な木地づくりから始まります。箸の芯となる木地は、ただ細く削ればよいというものではなく、持ったときのバランスや重心、太さの緩急、さらには指のかかり方までが緻密に設計されているそう。

お箸になる前の素材。様々な種類の素材がストックされている。

使用する木材は、楢や桜などの国産材や希少なインポート材など。まっすぐで狂いが少ない素材を見極め、節の位置や繊維の向きなどを考慮して1本1本切り出します。「長さや厚みがほんの少し違うだけでも、手にしたときの印象はガラッと変わるんです」。そう語る現場の職人さんたちは、すべての材に“クセ”があることを前提に向き合い、それに合わせて丁寧に削り、面取りし、そして全てを目視検品して、ようやく“箸のかたち”になります。箸の土台づくりにもっとも時間と人の手をかけているからこそ、全国一の高い品質と信頼を得ている『マツ勘』のものづくり。そうした誇りは、ひとつのラインのように後世にも丁寧に受け継がれています。

箸の可能性を追求していく姿勢と新たな試み

クリエイティブディレクター・堀越一孝さん

「直近では“箸を選ぶ楽しさ”をもっと暮らしの中に広げていきたいと考えています」と堀越さん。それは例えば、和食の日は細く繊細な『若狭塗箸』、中華の日にはすべり止め付きの太箸。そんな風に、料理や使うお皿によって箸を選ぶこと。「ひとり一膳という固定概念を超えて、箸にも“着替える感覚”を取り入れてほしい」と提案し、日々の食卓に、小さな変化と“わくわく”を届ける。箸はもっと自由で、暮らしをちょっと豊かにする道具になれると、『マツ勘』は信じています。

『マツ勘』が描く“わくわく”を、HESTA LIFE storeからあなたの暮らしへ

HESTA LIFE store(ヘスタライフストア)で販売しているマツ勘のお箸

箸という小さな道具に、100年の技術、文化、そして人の想いを込める『マツ勘』。彼らが描く“わくわく”は、単なる言葉ではなく、未来へと続く企業の在り方そのものです。モノをつくるだけでなく、気持ちを届け、場をひらき、人をつなぐ。その先に広がるのは、。そんな毎日の暮らしをちょっとだけ豊かにするあなただけの一膳を、ここから見つけてみませんか?使う人にも作る人にも豊かさをもたらす新たな暮らし。

うつわと、楽しむ三角箸「UTSUWATO」
nendo × 箸蔵まつかん「hanataba 23cm
STILLEBEN トング

若狭塗 伝統工芸士 古井正弘|桐箱入
「貝きりこ」 「花篭」

マツ勘
住所:福井県小浜市北塩屋16-5 MAP
URL:https://matsukan.com


Credit
Photo_Ryo Sato
Edit_Satoshi Yamamoto
Text_Takuya Kurosawa


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小浜のみんなが集う『GOSHOEN』を拠点に、地域の100年先を見据えた豊かなまちづくり>>> 


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