2024.10.09
地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画『地域創生ローカルヒーローズ』。今回伺ったのは、器を中心としたセレクトショップ『Origami Sendai』。有名無名問わずニュートラルにセレクトされた個性豊かなラインナップが人気を博し、なかにはここでしか出会えない商品も。オーナーのおりがみさんに話を聞きながら、その魅力をお届けします。
渋谷109を中心にしたレディースクロージングやクラブファッション、はたまた代官山や青山にインポートのセレクトなど10数ブランドを抱えた某アパレル会社で商品企画兼MDを務める。その後転職やプライベートでの出会いなどがきっかけでクラフトのショップを開くため、地元仙台に戻り、2017年に『Origami Sendai』を立町にオープン。2023年に現在の支倉町に移転。
instagram:@origami_sendai
目次
仙台市地下鉄南北線北四番丁駅から徒歩15分。マンションが立ち並ぶ住宅街にひっそりと構える『Origami Sendai』。白い外壁から突き出た梁と屋根は、まるで古き良き日本家屋のような趣のある佇まいです。
ステンドガラスが嵌めこまれたアンティークの大きな扉を開けると、店主がセレクトしたさまざまな器や雑貨が、こじんまりとした空間に並びます。不易流行を下地にした店内は、古材を使用した什器やアンティーク調の調度品に、DIYで作られた手作りの物が組み合わされていて、不思議な空間を作っています。
ラインナップは、全国各地の作家さんが作る器を中心としながらも、服飾雑貨やアクセサリー、衣服など、有名無名やジャンルを問わない作品が、時期によって移り変わりながら並びます。そうしたユニークなセレクトには、自身の経歴が大きく関わっていると、店主のおりがみさんは話します。
「自身のクリエイティブという意味では、コンプレックスを感じた人生でした。田舎仙台から憧れる都会東京のデザイナーやクリエーターの方々は、0から1を生み出す人。対して私は、既存のものを組み合わせたり、数字や環境から売れ筋を作る人でした。さらに優秀な上司や部下、取引先のメーカーやベンダー、仲間たちがあって初めて生まれるプロダクト。ひとりで何かを生み出せる人に、尊敬の念は勿論、当時は憧れと嫉妬があったと思います。当時は認めたくありませんでしたが(笑)。
そんな自分は王道では勝てないと悟り、これまで交錯してこなかったパーツやジャンルを掛け合わせてみたりして、自分の立ち位置を模索していました。何事にも捉われず、と言えば聞こえは良いですが、出来るだけニュートラルな視点で、あえて王道の人が出来ない創作を心掛けていました。そうした作り手として養った価値観やコンプレックスが、選び手かつひとり店主となった今の自分を作っているんだと思います」
2枚目:COOK×TALKY×ORIGAMI SENDAI ×OMUSUbee プレート24cm 13,200 円 (税込)
3枚目:COOK×TALKY×ORIGAMI SENDAI ×OMUSUbee 湯呑み 8,360 円 (税込)
1枚目:COOK×TALKY×ORIGAMI SENDAI ×OMUSUbee スケボー箸置きセット 6,380 円 (税込)
2枚目:COOK×TALKY×ORIGAMI SENDAI ×OMUSUbee フラワーベース 6,820 円 (税込)
そんな魅力あふれる『Origami Sendai』が架け橋となった、スペシャルコラボレーションアイテムがこちら。ロサンゼルスを活動拠点とする大阪出身のグラフィティアーティストCOOK氏、陶磁器を中心に民芸とストリートカルチャーをミックスする『TALKY』、そして我らOMUSUbee。異なる個性をひとつにまとめた、ほかでは出会えない超オリジナルな波佐見焼のシリーズです。
グラフィティを基盤にしながら、キャラクターを用いたストーリー性ある作風によって独自の世界観を表現するアーティスト。90 年代後半より、地元大阪にてグラフィティ・ライターとしての活動をスタート、直後に単身渡米。LAにて現地のグラフィティ・ライターと交流しながらグラフィティの技術を習得し、腕を磨く。帰国後、さまざまなジャンルとのコラボレーションを手がけ、LAの伝説的なグラフィティ・ライターであるSLICK(OG SLICK )のブランドである『DISSIZIT! 』を筆頭に数多くのプロジェクトを成功させてきた。さらにハワイ発祥のストリートアートプロジェクト『POW! WOW! 』や台湾のミューラルフェスへの参加も果たすなど、海外でもミューラル・アーティストとして活躍している。
instagram:@cookdissizit
400年以上の歴史を持つと言われる陶磁器、波佐見焼で有名な長崎県波佐見町をルーツのひとつとして活動する、2009年発足のミンゲイプロジェクト。創業のきっかけは、メンバーの同級生であった波佐見焼の窯元の家子から聞いた、「陶磁器の墓場がある」という言葉から。そこから、製品として流通できない波佐見焼のB品が大量に廃棄されている事実を知り、その現状を打破するべく、アパレルをバックグラウンドとする3人が決起。プロダクトのもつ可能性をビースティーボーイズ世代の新解釈で提案しながら、伝統と先端技術のスクラッチによるニューウェーブな陶磁器をリリースしている。
instagram:@talky_insta
また本企画の背景には、陶磁器とストリートのミックスという新しいデザインの創出以外に、もうひとつ大切なポイントが。それは、工芸品が直面する課題解決への取り組み。工芸品とひと言に聞くと、芸術品や嗜好品という印象がある一方で、実は大量廃棄という問題を常に抱えているのが現実です。波佐見焼の場合は、流通できないB品が大量に廃棄されており、その現実を打破するべく活動しているのが『TALKY』さんの“ミンゲイプロジェクト”。こちらのシリーズには、彼らの廃材を積極的に使用するプロジェクトを後押ししたい、という想いも込められています。また“もったいない”というモノを大切にする活動も日本が誇る文化のひとつ。そんな『TALKY』さんの作品に、グラフィティという異なる文化を交えることで、波佐見焼という伝統品に新しい命を吹き込みました。
「波佐見焼、ストリート、グラフィティ。本コラボをひと言で表現するなら、まさに“不易流行”というワードに尽きるのではないでしょうか。古き良きものに新しい命を吹き込むには、今までにはない見解と、常識には囚われないちょっとした反骨精神が必要なのかもしれません。波佐見焼という文化を今に伝えながら、これまでにはない造形を模索し、そしてグラフィティがアートとして受け入れられるようになってきた今の時代だからこそ、鑑賞するだけではなく、モノとして生活に取り入れる楽しみ方もあっていいのでは。工芸品やアートをどう見るか、どう使うか。自分なりの感覚を大切に、ぜひ自由に今作を楽しんでください」と、新しい文化の橋渡し役を『Origami Sendai』が担います。
ラインナップは、お皿やカップといった定番モノに、Tシャツを模した一輪挿しと、スケートボード型の箸置きを加えた計4型。それぞれにCOOK氏のタギングというグラフィティの手法を用いた独特のサインで、「伝統」や「文化」といった言葉をオンした遊び心満載のデザインとなっています。『Origami Sendai』とOmusubee storeにて絶賛販売中なので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
器や雑貨を通じて、暮らしの豊かさを伝えていく『Origami Sendai』。ただモノを売るだけでなく、クラフトアイテムに対する敬意や、見合った対価を支払う文化が、ここ仙台でも根付くことを店主は願っているそう。街の一部として地域に根付きながら、器や文化の架け橋となる場所を目指していく、おりがみさんの今後にご注目ください。
Origami Sendai
住所:仙台市青葉区支倉町2-51 MAP
instagram:@origami_sendai
Credit
Photo_Shuhei Nomachi
Text_Takuya Kurosawa
Edit_Satoshi Yamamoto