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PEOPLE

2024.08.19

昔を懐かしみ、今に紡がれていく
琺瑯〈kaico〉のある暮らし

地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画『地域創生ローカルヒーローズ』。今回伺ったのは、OMUSUbee storeでも取り扱う琺瑯シリーズ〈kaico〉を展開する、古民家カフェと暮らしの道具店『kaico cafe』。大阪の地で、昔の暮らしを懐かしみ、そして今も大切に紡がれていくべき人との出会いや、モノを提供する人気店です。オーナーの竹原 美已さんに話を聞きながら、その魅力をお届けします。

築73年の質屋を活かした風情ある佇まい

大阪天満宮駅から徒歩4分。飲食店や個人商店がずらりと並ぶ、日本一長いといわれる天神橋筋商店街の最南端にある『kaico cafe』。昭和23年に建てられた趣のある商屋をリノベーションし、2016年にオープンしました。

昭和レトロな隠れ家的空間

1階では“馴染む”をテーマにした暮らしの道具を扱い、2階は個室も備えたカフェスペースに。さらにテラス席のある中庭や、その奥には蔵が隣接するなど、通りから一見するだけではわからないさまざまな空間が広がっています。
また、随所で昭和の日付が記された古新聞や、かつての持ち主が愛用していたミシンや電燈、引き出しなどが展示されており、色濃い昭和レトロな趣が楽しめるのも見所。

失われていく日本のモノを今に紡ぐ問屋魂

そんなカフェの母体となっているのが、キッチンツールを中心とした日用品問屋『FORMLADY』。代表の竹原さんは、戦後の昭和の暮らしを懐かしむこと、そして残すことで生まれる“人・モノの関わり”を、店という場から伝えていこうと『kaico cafe』を開業したそうです。
「問屋として日本全国を回り、沢山の素敵なモノと出会ってきました。ただその中でしっかりと売っていくことまでを考えている生産者さんというのは、意外にも少ないんです。いいモノをつくり終えた時点で満足する方が多かったり。けれど現実は、ものすごい高い技術を使っているモノ=売れるモノ、というわけではありません。
このままでは、海外製品などの単純に安価なモノが選ばれ、日本のモノづくりは衰退していってしまいます。だからこそ、私たちは問屋としてだけではなく、店という場をつくり、彼らの技術から想いまでを、消費者に伝えていこうと思いました。
加えて、逆に消費者からの声を作り手にも届けるようにしています。私たちはデザインができるわけではないですが、こんな形、こんな色にしたら売れるんちゃう? みたいな提案をしたりと、産地の人にも現場からの声を届けていくことで、いいモノを売れるモノにしていければと。
小売とは、『小さいものを売る』と書きます。作り手から売り手、使い手までの会話や信頼など、さまざまな小さな積み重ねこそが、流通の原点だと私は考えます。そうした積み重ねを大事にしながら、地域に愛される場所として、モノに込められた思いや歴史を次の世代に紡ぐ場所を担っていけると嬉しいですね」。
店は人とモノを橋渡しする大事な場。一つひとつ息を吹き込まれて生まれる日本のモノづくりを、使い手までに心を込めて届けています。

国産琺瑯の再生を目指したモノづくりへの着手

デザインを取り入れた琺瑯の新しいキッチン雑貨

日本のモノづくりを応援する竹原さんの働きは、店づくりだけに留まりません。失われていく日本の技術に手を差し伸べ、自らモノづくりにも参画しています。キッカケは琺瑯の衰退を目の当たりにしたことからだそう。
「昔は国内に何百という琺瑯メーカーがあったのですが、今ではたった3社しか残っていません。戦後にプラスチックやステンレスなどの安価で軽い素材が入ってきたことにより、琺瑯人気は衰退し、いくつもの会社が潰れていきました。時代の流れとはいえ、それまで紡がれてきた技術やモノが目の前で失われていくのは、とても辛かったですね。そのときに、うちでも琺瑯の倒産品を扱うことがあり、せめて最後の1個までちゃんと売ろうと、金型ごと買い取ったんです。残った商品を売りつつも、いつか復活できたらと思って。
それから全国を巡りながら出会えた、昌栄工業さんやデザイナーの小泉誠さんなどの協力もあり、2006年に再び琺瑯の販売をスタートすることができました」。
そうして完成したのが、店名を冠した琺瑯ブランド〈kaico〉。目指したのは、懐かしくも普遍的かつモダンなデザインであること。
「5年10年経っても使い続けられる普遍的なモノであり、かつ懐かしくも新鮮に見えるようなモダンな機能や佇まい。産地の技術を上手くデザインの中に落とし込みながら、琺瑯を“今”の形に仕上げています」と、販売する琺瑯アイテムは、一見クラシックな装いでありながらも、随所に使いやすさを追求したこだわりが盛り沢山。

美味しいコーヒーが淹れられるドリップケトル

例えばドリップケトルでは、お湯の出始めから心地よく真っ直ぐ下に落ちるような設計を実現。また三角断面の湯口が、繊細で糸のような雫を作り出し、いつものコーヒーがもっと美味しくなるとか。店頭のカフェコーナーの調理では、実際にケトルやミルクパンを使用していますので、使い方など気になる方は、ぜひ店員さんに尋ねてみてください。OMUSUbee storeでも絶賛販売中です。

スペシャルティコーヒーと多彩な自家製スイーツ

後味にこだわったオリジナルブレンド

『kaico cafe』では置かれている道具のみならず、カフェメニューも人気。コーヒーは、知人の『Cafe Sucre 軽井沢焙煎所』にオーダーしたスペシャルティコーヒーのオリジナルブレンド。コクがありながらクリアな飲み口で優しい余韻が残ります。スイーツは手作りにこだわり、いずれもコーヒーに合うよう甘さ控え目な仕上げ。
この日は、コーヒーと瀬戸内レモンで作られたレモンチェッロを用いたレモンケーキをオーダー。しっとりとした生地に爽やかな酸味が香り、コーヒーと一緒にいただくことで、より幸福感が高まっていく美味しさ。ほかにも昭和仕立てのプリンは、昔懐かしい固めの食感ながらも、口どけはなめらか。玉子の濃厚な味わいがコーヒーとも相性抜群です。昭和レトロな空間でいただく美味しいコーヒーとスイーツで癒されてみてください。
kaico=懐古の「懐かしさの中に今がある」をコンセプトにした『kaico cafe』。佇まいはもちろん、空間やフード、日本のモノづくりなど先人たちが大切にしてきた古き良き魅力を大事にし、そして新しきを取り入れた今を伝えていく。天神橋筋商店街などを散策する際は、ぜひ立ち寄ってみてください。そこには懐かしくも新しい出会いがきっと待ち受けています。


kaico cafe
住所:大阪府大阪市北区天神橋1-12-21 MAP
URL:https://kaicocafe.jp


Credit
Photo_Takashi Hakoshima
Edit & Text_Takuya Kurosawa


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