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2023.11.28

九十九里の地の利と資源を生かし事業拡大。 ピーナッツバターブランド『HAPPY NUTS DAY』

千葉県九十九里にスケーターたちが集まり、ピーナッツバター作りを始めて約10年。千葉県の名産品である落花生を使ったオリジナルのピーナッツバターを試行錯誤で開発し、『HAPPY NUTS DAY』の名前は全国へと広まっていきました。
そして昨年、ついに自社ファクトリーがオープン! 工場に併設されたショップは国内初の直営店として営業し、これまで以上に千葉県産落花生を探求する新プロジェクトにも挑戦していくとか。

そんな千葉県から全国へと発信する、同社のファクトリーへとおじゃましてきました。

千葉県産ピーナッツ発祥の地が活動拠点

九十九里浜からほど近い千葉県山武市。千葉県産落花生が誕生した地として知られるこの場所に、『HAPPY NUTS DAY』のファクトリーがあります。ここで主に製造されるのは、千葉県産落花生・九十九里産海塩・北海道産てんさい糖のみを使用した無添加ピーナッツバター。現在は全国100店舗以上で手に取ることでき、そのすべての商品がここで作られています。千葉の新しい名産品誕生を目指す『HAPPY NUTS DAY』代表の中野 剛さんにお話を伺いました。

始まりはもらった落花生とスケート仲間との遊び

『HAPPY NUTS DAY』代表取締役/中野 剛さん

「『HAPPY NUTS DAY』は、2013年にスケートボード仲間との遊びから始まりました。そのとき九十九里で遊んでいて、たまたま出会った農家の方から、余ってしまった落花生を分けてもらえることになったんです。そこから、単純に仲間と新しいことをするのが楽しくて、なんとなくピーナッツバターを作ってみたんです。ミキサーで砕いたり、すり鉢で潰したり、焙煎したり。そうやって色々と試行錯誤しているうちに、気付いたらものすごく美味しいピーナッツバターが出来上がっていて、一気に夢中になりました。
最初の2年くらいは都内で会社員として働いていましたが、いつしか千葉県産落花生がどうしたらもっと輝けるのかを本気で考え始め、最終的にピーナッツバター作りへ専念しようと決めたんです」。

素材選びと手作りにこだわった激うまピーナッツバター

『HAPPY NUTS DAY』のピーナッツバターは基本的に、千葉県産落花生の中でも甘みと風味が特徴のナカテユタカという品種を使用。さらに落花生そのものの味を引き立てる北海道産てんさい糖と九十九里の海塩のみを加えた、純粋無垢なピーナッツバター (粒あり、粒なしの2種類)がここのベーシック。その他にも、料理人と共同開発したエスニック風味の〈ベトナムピーナッツソース〉や、養蜂場と協力して上質な蜂蜜を掛け合わせた〈ハニーピーナッツバター〉もラインナップ。11月以降の冬季シーズンには、期間限定の〈チョコレートピーナッツバター〉も登場予定。

製造過程でもっとも注力しているのが、落花生を焙煎した後の選別工程と教えてくれた工場長の永江さん。
「ひとつひとつ異なる火の入り方をするので、状態が悪いものは手作業ですべて取り除きます。なぜならこの豆の選別工程が味を左右し、美味しさに直結するから。豆の焙煎から薄皮むき、選別、加工、包装まで、すべて一貫して行うのがうちのスタイルです」。
雑味の少ない味に仕上がるのは、この厳しい手作業があってこそ。千葉県産落花生のおいしさを全国に広めたいという、強い気持ちのあらわれです。

資源の再利用や新たな試み、エネルギー改革にも余念なし

元々は幼稚園として使われていた建物を再活用し、可能な限りD.I.Y.でリノベーションした社屋で運営する『HAPPY NUTS DAY』。半分が工場、半分がショップ兼ワークスペースという構成で、出来立てホヤホヤの商品を提供し、時にはファクトリー限定商品も販売している。
「このファクトリーを作った理由のひとつとして、落花生が持つ魅力を多面的に引き出すチャレンジがしたいという想いがありました。例えば、東京の青山にあるモダンベトナミーズのお店『An Di』とベトナムピーナッツソースを開発しましたが、僕らにそのアイディアはなかった。こうしたコラボレーションを行うことで、落花生の新しい可能性を見つけることができるんじゃないかと思って。
その他にも、アパレルブランド『MARU TO』を招いて、ピーナッツの殻や薄皮を活用した染色のワークショップを開いたり、知り合いのパティシエを招いてお菓子作りをしたり。人と人との掛け算で思わぬ相乗効果が生まれるように、そんな関係を築ける場所にできたら最高ですね」と中野さん。

ファクトリーの屋上には太陽光パネルを設置。ここでの必要な電力から社用車の動力まで、エネルギーも可能な限り自給自足で賄っています。
「太陽光エネルギーで作られるピーナッツバターを想像したときに、すごく気持ちいいなって思ったんです。中身の味は変わらないけど、気分は変わるよな、って。そういう想いもここなら実現できると感じ、屋上に太陽光パネルをと設置しました。とはいっても、まだ始めたばかりなので、走りながら考えるスタンスですけどね。今後どうしたらもっとうまくできるのか、日々模索している最中です」。

『HAPPY NUTS DAY』の進化を心から楽しみたい

「自分は東京都の池袋出身ですし、なぜそんな東京生まれのスケーターが九十九里でピーナッツバターを作っているのかと疑問に思うかもしれませんが、なにより、自分が携わっていて面白いと感じられることが優先なんです。本当に心から納得いかないと頑張れない性格なんだと思います。だから地方創生とかも深く考えずに、まずは楽しくやる方が結果も自ずと付いてくると、過去の経験からも学びました。それに東京と千葉だったら、ライバルが少ない千葉の方が情報発信しやすいかな、とも感じています。雑念が少ないので何にも影響されず、オリジナリティを保ちやすいんだと思いますよ」

最後に中野さんは、今後を見据えてこう話してくれました。「今は、とにかく『HAPPY NUTS DAY』がどこまで輝けるかに挑戦していますが、一方で、落花生農家の存続について相談を受けることも増えてきています。リスペクトの気持ちを持って継承したいという想いも湧いてきていますし、今後のひとつの課題ですね。
それと、気候変動についてどのように向き合っていくか。美味しい豆はできたけど、収穫量としては不作だったなんてこともありますからね。素材がないと続けられないので、どのようにしたら自分たちがその一助となれるのか、考えていきたいと思っています」。

HAPPY NUTS DAY
住所:千葉県山武市蓮沼ハ5373 MAP
URL:https://happynutsday.com/

Credit
Photo_Yuki Araoka & Satoshi Yamamoto
Text_Nobuyasu Saito
Edit_Satoshi Yamamoto


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