2025.12.23
のどかな田畑と豊かな木々に囲まれながら、日々“あたりまえ”を丁寧に積み重ねる淡路島の養鶏場、『北坂養鶏場』。HESTA LIFE女子のたまご採取体験を通じて、北坂さんが養鶏現場から伝えたい大切なことをお届けします。
目次
次に案内してもらったのは直売所のすぐ近くにある平飼いの鶏小屋。前述の北坂さんの想いを体現するための、見学・体験の役割も兼ねた鶏舎です。その思惑どおり、小屋の中で思い思いに動き回る鶏を見ていると、さっきまで商品として見ていたたまごが、確かに特別なものに思えてくる。せっかくなので、産みたてほやほやを採卵させていただくことに。

足元の扉をカパっと開けると、そこは巣箱。敷き詰められたワラの上には、すでにたくさんのたまごが産み落とされています。「いまはアクリルで閉じていますが、ここを開けておくと、自然と入ってきて産卵するんです。暗くて狭い場所を安全だと感じる習性なので」と北坂さん。

手を伸ばして一つずつ手に取ると、さっきまで直売所で見ていたものと同じなのに、急に重みが変わるから不思議。採れたてを手にした女子2人も思わずにっこり。たまごが食材になる前の貴重な時間を、ちゃんと体で覚えた瞬間でした。


直売所から車で5分くらいの場所には、約13万羽を飼育する大型のケージ飼い鶏舎群が。通路を挟んでずらりと並ぶ鶏たち、その足元で流れていく、産まれたばかりのたまごたち。さっきの平飼いが生命活動を感じる鶏小屋ならば、こちらはまさに産業の現場。養鶏業のリアルが詰まっています。
また北坂さんいわく、鶏舎で出る鶏糞は自社堆肥〈島の土〉として再利用・販売しているそう。さらに最近では行政と連携した取り組みで、海の環境改善にも活かされているとか。
「もちろん、むやみに海に流す話じゃなくて、行政主導のテストプロジェクトの中で、海の堆肥として提供しています。特に瀬戸内海は浅いから効果が出やすいと言われていて、実際に海苔の養殖などでは良い結果が出ていると聞いています。因果関係はこれからの部分もあると思うんですが、一次産業に携わるものとして、自然のサイクルの中で役に立てることがあるのは、とてもありがたいですね」。

北坂さんは続けます。「ボクの仕事の軸はあくまで養鶏です。鶏を育てて、たまごを産んでもらって、鶏糞が堆肥になって……そういう循環が、まずある。そのうえでそれを伝える際には、ずっと一緒にやってくれているデザイナーさんが描くブランディングや編集など、さまざまなプロの仕事が関わってくる。一次産業の現場と、そういうクリエイティブな領域が無理なく噛み合っているバランスって、すごくいいですよね。
堆肥に関しても、みなさん必ずしもサスティナブルとかを考えて選んでくれているわけじゃないと思うんですが、軽トラの荷台に〈島の土〉の袋を積んでたり、空袋を野菜入れやゴミ袋に使ってたり、そういう風景が、なんだか素敵だなって思えるんですよね」。

最後に北坂さんはこう話してくれました。「正直、養鶏ってめちゃくちゃしんどいんですよ。父が亡くなって事業を継いだばかりの頃は、自分は日本で一番不幸なんじゃないかって、いつも思っていました。だけどいまは、180度じゃなくて360度、ぐるっと1周して見え方が変わりましたね。さっきも言ったけど、一次産業として自然のサイクルの中にいられるということは、とても幸せなことだと思っています。
だからこそ一般の方にも少しだけ、たまごが鶏から産まれてるってことを思い出してもらいたい。いつでも買える身近な食品ではあるけど、そこにはちゃんと生命活動があるんだってことを思い出しながら、美味しくたまごを食べてもらえたら嬉しいです」。

直売所から鶏舎までひと通り案内してもらい、最後は『キトサカプロジェクト』のロゴ看板前で記念のワンショット。たまごを「いつでも買える食材」として見ていた現代人の感覚を、いま一度改めることができたような、そんな実のある取材になったのでは。
もちろん持ち帰らせていただいた採れたてたまごも、感謝を捧げて食べさせていただきました。
北坂さん、鶏さん、ありがとうございました!
そんな北坂さんの思いと『北坂養鶏場』のブランド力が詰まった大ヒット商品、〈たまごまるごとプリン〉。見た目はたまご。でも中身はプリン状。たまご本来の美味しさを丸ごと封じ込めた唯一無二のお味は、たまご好きなら必食。贈り物としても手土産としても喜ばれること請け合いです。

北坂養鶏場 直売所
住所:兵庫県淡路市育波1115-1 MAP
URL:https://kitasaka.net/
Credit
Photo_Ryo Sato
Text & Edit_Satoshi Yamamoto
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