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2026.03.19

境港の干物はこうして生まれる。水産加工の現場を訪ねて『田手商店』

競りの見学が終わり、少し時間を置いた午前8時。やってきたのは『境港水産物地方卸売市場』から車で10分弱の場所にある干物メーカー『田手商店』さん。中に入ると、作業場ではすでに下処理が始まっていました。案内役はこの方。

田手商店代表 田手広樹さん

田手商店 代表/田手広樹さん

同社3代目。もともとは煮干しづくりを主軸としていたが、約10年前、並行して行っていた干物づくりに1本化。市場での競りに同行することも多く、素材の味を活かした干物づくりを続けている。

到着早々、獲れたて白バイ貝の剥きたて実食

殻付きのまま状態チェック。触るとしっかり動く活き白バイ貝。

剥き身をその場で。コリコリ食感&磯の香りが絶品。

撮影チーム到着時、作業台に並んでいたのは、この日揚がった白バイ貝。興味津々で見ていると、その場で刺身にして食べさせてくれました。
獲れたてだけあって、食感はコリっコリで、磯の香りも超新鮮。嫌な臭みはまったくなく、シンプルにめちゃくちゃうまい。

エテカレイが干物になるまで。下処理→乾燥室へ

下処理を施す田手広樹さん

手早い包丁さばきで下処理

作業台の反対側では、エテカレイの干物づくりに向けた下処理中。素早い手さばきを魅せるのは、代表の田手広樹さん。頭を落としてヌメリを取り、内臓を丁寧に洗い流していきます。

楽しそうにおしゃべりしながらも、串打ちの手はすこぶる早い。

機械仕掛けの乾燥法で安定生産

下処理を終えたエテカレイは、お母さんたちの手で手際よく串打ちされ、乾燥用のラックに並べられていきます。運ばれていく先は、野外の干し場ではなく、別室の冷風除湿乾燥機。環境に左右されやすい自然乾燥と違い、常に安定的に狙った状態に仕上げていけるそう。

乾燥を終えたら真空パックで商品化

こちらは定番のベラカレイ。前述のエテカレイよりも身が大きい。

パッケージされたベラカレイ
真空パックも自社で行う。

乾燥を終えたら、そのまま同社内で真空パックにされ商品化が完了。なおこちらは、先ほど下処理していたエテカレイとは別の魚種、ベラカレイ。『田手商店』の定番のひと品です。
味付けは国産塩のみ。素材の味を活かしつつ、苦味や臭みに繋がる部分も1枚ずつ手作業で取り除くため、身離れがよく食べやすいのも特徴。

3代目代表広樹さんが語る、干物づくりの軸

田手商店代表 田手広樹さん

味付けより下処理。素材の良さを、そのまま食べてもらうために

干物づくりの一連を見学したら、最後に代表の田手さんからヒアリング。
「干物づくりの工程は超シンプル。魚をさばいて塩水に漬けて、乾燥させて冷蔵庫にいれるだけ。一部でみりんや味噌を使う商品もありますが、基本的に塩しか使わないので、味のごまかしも効きません。だからこそ、何より下処理が大事。ウロコを取る、内臓を取る。当たり前のことですが、当たり前のことを如何に丁寧に行うかが、味を大きく左右するんです。
もちろん魚の質もとても重要なので、私自身も可能な限り『マルイケ水産』さんの競りに同行し、池淵さんと相談しながら、常に状態の良い魚を選んで仕入れています」。

目指すのは安定供給。定番を磨き、次の柱を育てる

「ウチのこだわりは、魚本来の味を楽しんでもらうこと。だから余計な味付けをせず、塩分もできるだけ薄め。食べ終わったあとに塩辛さじゃなく、魚の旨みが残る干物づくりを目指しています。
だけど獲れる量には波があるし、取引先の要望もそれぞれ。定番のベラカレイを軸にしつつ、もう1〜2品、安定的に回せる商品を増やしていきたいです。逆に言うと、先ほどの白バイ貝だったりモサエビだったり、数や時期に限りはあるけれど、他ではなかなか食べられない干物もあるので、気軽にお問い合わせいただけると嬉しいですね」。

田手商店
住所:鳥取県境港市清水町622-2 MAP
TEL:0859-30-3997

境港の仕事が、食卓に届くまで

完成品の向こう側にあったもの

競りの熱気と仲買の責任を間近で見学した『境港水産物地方卸売市場』と、干物という食品の裏に隠された手間と意思の積み重ねを見た『田手商店』。
この2つを続けて見学することで見えてきたのは、普段は完成品としてしか見ない干物の裏側には、市場の仕組みと加工の哲学があり、だからこそこの味が生まれるという必然性でした。
みなさんも次に干物を選ぶときは、派手な味付けよりも、素材と手入れが丁寧なものを。境港の干物を、まずは1枚からでも手に取ってみましょう。


▼記事前編

【前編】境港水産市場に潜入。早朝の競りと仲買が動かす、日本海の魚の流通。

境港水産物地方卸売市場で仕入れられた海産物へと加工・販売する干物メーカー『田手商店』さんの加工場へ潜入。続きを読む>>>



Credit
Photo_Shuhei Nomachi
Text & Edit_Satoshi Yamamoto


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