2026.03.17
相模湾を望む長浜海岸のそばに2024年秋オープンした『2CHIE(ニチエ)』。牛タン専門店『いち江』の姉妹店でありながら、提供するのはまったく異なるメニュー。まかないから生まれた料理を主役に据え、同店を切り盛りする店主・池野 比呂子さんの思いをたどります。

池野 比呂子さん/2CHIE 店主
『牛タン いち江』代表の夫・水上 圭介さんとともに牛タン料理と向き合い、姉妹店『2CHIE』を立ち上げる。ホールを担当しながら、新メニューのアイデアを出す役割も担う。
目次
伊豆多賀駅から徒歩6分。「多賀港入口」バス停下車すぐ、長浜海岸のそばにオープンした『2CHIE』。

『2CHIE』が生まれたきっかけは、姉妹店『牛タン いち江』のまかないにありました。スタッフのために作っていた牛タンハンバーグをイベントで提供したところ、好評を博したことが始まりです。
「本格的にお客様に提供したいと思いましたが、『牛タン いち江』では機材的にもオペレーション的にも難しかったんです」。
ならば、新たな場所で。そう決断したふたりが選んだのは、相模湾を一望できる南熱海の地。目の前に広がる長浜海岸、バス停に隣接する利便性。このロケーションに惚れ込んで、ここに店を構えることを決めたそうです。
店内は、以前の駄菓子屋だった空間を、海の近さを感じさせるアメリカンな雰囲気に仕上げられています。大きな窓から差し込む自然光が開放感をもたらし、時計や小物などのアメリカン家具が随所に。
「海が近いから、ちょっとアメリカンな感じにしました。主に夫の好きなものと海のイメージで」と池野さんは話します。


店の調理の核となるのが、スチームコンベクションオーブンです。熱風とスチームを組み合わせて焼き上げるこの機材が、牛タンに新たな表情をもたらします。
「1度の温度の違いが仕上がりに大きく影響します」。
ローストビーフはしっとりやわらかく、ハンバーグはフライパンで焼くよりも短時間でジューシーに。オーブンだからこそ実現できる仕上がりが、『牛タン いち江』との明確な違いです。
メニューはローストビーフ丼、ハンバーグ、カレーの3種。素材の牛タンは、仙台の問屋から肉質・脂の入り方・大きさを基準に月1回のミーティングで選び抜いたものを使用しています。



看板メニュー〈牛タンローストビーフ丼〉は、まずそのままの味から始まります。一晩かけて調味料を染み込ませてから焼き上げた牛タンは、一般的なローストビーフと比べて格段にやわらかく、口の中でほどけていく。卵黄を絡めれば、さらに深みが加わります。
そこにあごだしを注いで茶漬け風にすると、和と洋の旨みが合わさった別の一皿へと変貌。薬味を加えれば、また違う表情も。ひとつの丼でいくつもの食体験ができる、この店ならではの構成です。
使用する肉は牛タン100%。玉ねぎ、卵、パン粉は加えますが、肉はすべて牛タンを使った贅沢な仕上がり。
「一般的なハンバーグよりも弾力や旨みがあり、食べ応え抜群です。いずれのメニューも牛タン専門店だからこそ味わえるものに仕上げています」。
オーブンで焼き上げたハンバーグにチーズをまとわせた〈チーズ牛タンハンバーグ〉は、ジューシーでありながら脂っぽくなく、牛タンの特長がそのままハンバーグに詰まった一品。噛むほどに旨みが広がります。
今年、お客様の声から新たに開発した添加物不使用の自家製〈牛タンジャーキー〉を販売。完成まで1年を要し、こだわりの素材と3ミリスライスで仕上げた一品は、犬にも猫にも人間にも食べられる商品としてペット愛好家に人気です。


「本当は牛タンのミートソースやそぼろというのも構想にあるんです。まかないとしては何度か作ったこともあるのですが、調理場の狭さからメニューとしては却下されてます(笑)」と池野さんは笑います。
新しい料理のアイデアを出すのは奥様の役割。まかないから生まれたハンバーグがそうであったように、日常の中から料理が育っていく。そのプロセスが、この店の原動力になっています。
長浜海岸に面した立地には、散歩がてら訪れる地元の方や家族連れ、犬連れのお客様も多く集まります。〈牛タンハンバーグ〉と〈牛タンごろっとカレー〉はテイクアウトにも対応しており、海を眺めながらいただくのもこの店ならではの楽しみ方です。
まかないから生まれた独自の牛タン料理が、南熱海の海辺で静かに育っており、今後の創作にも目が離せません。南熱海に訪れた際には、ぜひ一度足を運んでみてください。

2CHIE
住所:静岡県熱海市上多賀164 MAP
URL:https://www.instagram.com/2chie164
Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Text & Edit_Takuya Kurosawa
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