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TRAVEL 旅行

2025.09.02

受け継がれる伝統といまを訪ねる古都散歩。HESTA LIFE的・京都巡り

受け継がれてきた伝統が色濃く残るその一方で、常に新しい文化や価値観が芽吹き続ける街、京都。そんな京都の街を、HESTA LIFEを支える女子スタッフ2名が自分たちの目線で散策。老舗が紡ぐ用の美と新たな挑戦、若きクラフトマンが挑む新しい表現、そして街角で出会うフォトジェニックな景色など。いわゆる観光ガイドでは触れきれない、いまの京都をめぐる旅へ、ご案内します。

伝統と進化が重なり合う『永楽屋 細辻伊兵衛』の世界

歴史と文化が息づく古都・京都の街を巡るトップバッターは、江戸時代初期の元和元年(1615年)から続く手ぬぐいの大老舗『永楽屋』さん。ここはそんな『永楽屋』の看板を400年以上に渡り襲名しながら守り続ける当主の名を冠した美術館、『細辻伊兵衛美術館』。現当主である14世 細辻伊兵衛氏に至るまでの歩みを、江戸時代の手ぬぐいなど、民俗史的にも美術史的にも貴重な資料で辿ることができる歴史が詰まったスポットです。このときは、現在開催中の大阪万博になぞらえた、1970年の大阪万博当時に作られた手ぬぐいたちの展示(10/23まで)もあり。女子2人も夢中で見入っていました。

美術館の隣には、ミュージアムショップもかねる入場無料の『永楽屋細辻伊兵衛商店 本店』が。伝統を受け継ぐ定番品はもちろん、某有名バンドのアルバムジャケットモチーフや、落合陽一氏や田名網敬一氏などの現代アーティストとコラボレーションしたモダンデザインなど、多種多様な手ぬぐいがずらり。実用品でありながら伝統工芸品であり、そして現代的な美術品としてのアート性も備えた『永楽屋』の世界観を、気軽に持ち帰れるのが魅力です。京都観光のお土産としてはもちろん、普段づかいのお気に入りとしても日常に彩りを添えてくれる1枚に出会えるはず。

また2階の一角には、 20世紀初頭のヨーロッパで活躍した革新的なバレエ団『バレエ・リュス』と『バレエ・スエドワ』をモチーフにしたオリジナルブランド、『ディアギレフ&マレ』のショップも。ピカソやジャン・コクトー、シャネルなどの芸術家も関わったというその芸術性が落とし込まれた手ぬぐいは、もはやアートピース。 14世 細辻伊兵衛氏のアーティスティックな感性を映し出す、まったく新たな手ぬぐいをお楽しみあれ。
そんな伝統と革新が交差する空間は、京都旅の序章にうってつけ。進化し続ける古都の深みをお楽しみください。

細辻伊兵衛美術館/永楽屋 細辻伊兵衛商店 本店/ディアギレフ&マレ ショップ
住所:京都市中京区室町通三条上ル役行者町368
URL:https://www.eirakuya.jp/

異なる製陶文化が融合する窯元『蘇嶐窯』

次に訪れたのは、京都・清水焼発祥の地、東山区清水に工房兼ギャラリーショップを構える窯元『蘇嶐窯』。ですがこの窯元は、一般的な清水焼とは少し事情が異なります。というのもこちらでは、夫婦それぞれが異なる陶芸の出自を持っていて、その技法をブレンドし、まったく新しい表現を生み出しているのだそう。
ご主人はこの場所で代々受け継がれる窯元に生まれ育ち、清水焼の技法を受け継いだ4代目・涌波蘇嶐さん。そして奥さまは、福岡は小石原焼の窯元に生まれ、その技術と持ち前の稀有な感性を活かした作陶を続けるまどかさん。清水焼と小石原焼。2つの伝統がひとつの工房で交わる、そのハイブリッドなスタイルに惹かれる人も多いのだとか。

2フロア構成の工房兼店舗の1階は、主に夫婦での共作を販売。一方の2階は、定期的に入れ替えを行いながら企画展なども実施。細部の設えにも変化を持たせ、1階とはまた異なる雰囲気で展開しています。中でもこの日特に目を引いたのが、伝統ある窯元の現当主としてピュアにその技法を受け継ぎ作陶された、4代涌波蘇嶐単独名義の作品。深みがありながらも透明感のある青瓷の色は『蘇嶐窯』を象徴する大きな見どころで、ひと度手に取り見てみれば、その美しさに引き込まれること請け合いです。
また、土偶や縄文土器などをモチーフにした、まどかさんひとり仕事の〈縄文シリーズ〉も大人気。ユーモラスでありながら不思議な力強さを放つ作品は、思わずコレクションしたくなる魅力にあふれています。
そんな伝統と個性が交差する空間こそ、このご夫婦だから生み出せる『蘇嶐窯』の真骨頂。ここでしか出会えない器たちを、京都の旅に特別な記憶を刻んでみては。

蘇嶐窯
住所:京都市東山区清水4丁目170-22
URL:https://soryu-gama.com/

超有名スポット『八坂通り』で出会う京都の象徴

次の目的地に向かう前に、せっかくだから、これぞ京都な『八坂通り』にも寄り道。京町家が連なる石畳の路地から『法観寺』の五重塔が抜けて見える風景は、まさにフォトジェニック。この風景を目当てに国内外から集まった多くの観光客が闊歩するその一瞬をつき、最高の京写真が撮影できました。
また『八坂通り』の道中には、もうひとつ人気のスポットが。それが、カラフルな“くくり猿”で知られる『八坂庚申堂』。境内いっぱいに吊るされた色とりどりの“くくり猿”の鮮やかさときたら、それはもう写真を撮りたくなって当然。とはいえここは、960年に建立された由緒正しきお堂。訪れた際には、しっかり本堂へのご挨拶も忘れずに。神の使いとされる3匹のお猿さんが迎えてくれます。

八坂通り
住所:京都市東山区金園町390(八坂庚申堂)
   京都市東山区清水八坂上町388(法観寺)

香りで心を整えるバスフレグランスショップ『ONE SEVEN LABO』

前出の『八坂庚申堂』のほぼ真裏。観光客でにぎわう『八坂通り』から1本細い脇道を入ると、次の目的地『ONE SEVEN LABO』に到着。ここは2024年11月にオープンしたばかりの香りのお店。「1週間のうち、たった1日でも、自分をいたわる日を持ってほしい」。そんな想いをテーマに、世界中から選び抜いた27種類の天然精油を使用した、合成香料不使用のバスフレグランスを展開しています。
店内はわずか1坪足らずのコンパクトな空間ですが、楢・タモ・栗など、各所の建材に使用された天然木材が温もりを添える、自然味あふれる落ち着きスペース。整然と並んだ小瓶の姿はまるで、小さな実験室のよう。訪れた女子2人もお気に入りの香りを探しながら、「これいい!」と楽しそう。旅の途中にふと立ち寄れば、香りがそのまま思い出となって持ち帰れるはず。

ONE SEVEN LABO
住所:京都市東山区星野町88-2
URL:https://17labo.official.ec/

まっすぐな表現の力に触れるギャラリー『art space co-jin』

京都御苑と鴨川のちょうど中間、荒神口交差点のほど近くに佇む『art space co-jin』。京都府内やその近郊で制作を続ける障害のある人々の創作活動を紹介・支援する場として、2016年に開設されたアートギャラリーです。
展示は常設ではなく企画展ごとに入れ替わり、絵画や立体、写真、インスタレーションなどジャンルもさまざま。そこに共通するのは、障害のありなしに由来しない、ただ純粋に“表現すること”の力強さと自由さです。
この日行われていたのは、さまざまな企業ロゴを厚紙のコラージュと透明テープで再現する富田晃生さんと、同じく番組ロゴやキャッチコピーなどを粘土で再現するM.O.さんの合同展〈Catchy Catch〉。アートギャラリーでは珍しく触れることができる作品も展示されていて、文字通り作品の裏側まで食い入るように鑑賞することができました。興味のある方、企画展のスケジュールは下記URLからご確認を。

art space co-jin
住所:京都市上京区河原町通荒神口上ル宮垣町83 レ・フレール1階
URL:https://co-jin.jp/

世界に誇るクラフトジンの発信拠点『季の美 House』

ガイドブック的な定番コースをあえて外したHESTA LIFE的・京都街巡りも、早くもラスト。最後は、日本初のクラフトジン専門蒸溜所『京都蒸溜所』が手掛ける実店舗、『季の美 House』へ。世界で最も権威ある酒類品評会、IWSCのコンテンポラリージン部門でも最高賞を受賞した〈季の美 ドライジン〉を提供する、すべての酒好き必見のスポットです。
築100年超の京町家をリノベーションした店舗1階では、さまざまなジンベースカクテルが注文可能。というわけで2人は、〈季の美 抹茶トニック〉と〈ゆずギムレット(ベースリキュールは“季の梅”)〉をオーダー。世界最高峰のクラフトジンの味わいに、美味しいね、とにっこり。
また1階の入り口付近には『京都蒸溜所』の商品販売スペースも。ここでしか手に入らない限定品なども販売しているので、ファンはチェック必須です。

2階には〈季の美 京都ドライジン〉が完成するまでに辿る、徹底的なこだわりを可視化したギャラリースペースが。案内してくれた同社マネージャーの竹村さんによると、 〈季の美 京都ドライジン〉は府内を中心に選び抜いた11種類のボタニカルを使用していて、それらを種類別で計6回にわけて蒸溜しているそう。一般的にはすべてのボタニカルを一気に蒸溜するのが主流だというから、つまりかかる手間は6倍! そりゃ世界的な賞も受賞しますわと、スタッフ一同大感心。他にもここでは書ききれないほどのこだわりを聞き、モノづくり都市・京都に根付くクラフトマンシップの真髄をあらためて知ることができました。
といったところで、今回のHESTA LIFE的・京都巡りもいったんここまで。芳醇な香りの余韻をおみやげに、学びと発見に満ちた締めくくりとなりました。

季の美 House
住所:京都市中京区河原町通二条上る清水町358
URL:https://kyotodistillery.jp/

受け継がれるものと、新しく生まれるものに出会える街巡り

いかがでしたか? HESTA LIFE的・京都巡り。『永楽屋』で用の美と伝統に触れ、『蘇嶐窯』で継承と革新の共存を知り、『八坂通り』ではこれぞ京都を体験する。『ONE SEVEN LABO』では香りを選ぶ悦びに出会い、『art space co-jin』でピュアな表現の力を感じ、『季の美 House』では京都のクラフトマンシップを学ぶ。
受け継がれるものと、いま生まれるもの。その両方が同じ温度で息づいているのが、この街の面白さ。次はあなたの足で、京都に眠る深い魅力を見つけてみてはいかがでしょう。


Credit
Photo_Ryo Sato
Text & Edit_Satoshi Yamamoto


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