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PEOPLE

2023.12.15

モダンアートと伝統工芸のコラボレーション!
アーティスト須田 悠さんと九谷焼の窯元へ

繊細かつ華やかな絵付けで世界的にも人気を博す陶磁器、九谷焼。今回はそんな石川県の伝統工芸品に、アーティストさんのアートワークを乗せたオリジナル商品を作りたい!というOMUSUbeeの新たな試みを具現化するべく、九谷焼の窯元さん『宮吉製陶』を訪問。
OMUSUbee storeでも大変お世話になっている人気ショップ『THE HARVEST』坂手さん引率のもと、本企画のゲストアーティストとして招聘した須田 悠さんにもご同行いただき、打ち合わせとお勉強を兼ねて石川県は小松市へ行ってきました。


案内人
宮吉製陶 広報統括/陳宮吉 緯さん

台湾台北市出身。淡江大学日本語学科卒業後、千葉県麗澤大学へ留学、同大学院に進学し修士号取得。台湾と日本の架け橋を目指して社会教育事業に携わりながら、道徳教育・通訳・翻訳などの分野を勉強。現在は、奥さまのご実家でもある『宮吉製陶』の広報・商品開発・地域産業振興などを担う。

 

ゲストアーティスト
アーティスト/須田 悠さん

1985年、東京都多摩市生まれ。日本人としてのアイデンティティを探るべく、先人たちとの精神的な繋がりを求めながら、日々思いつく頭の中にある恒常性の欠落した世界観を表現。インディペンデントなアパレルブランドからナショナルブランドまで、多種多様なクライアントにアートワークを提供する。
Instagram:uyudas



九谷焼の窯元『宮吉製陶』について

1972年創業の『宮吉製陶』は、職人の技術と手仕事から生み出される伝統的な表情を大切にしながらも、現代のライフスタイルに寄り添う新しい提案を続ける、石川県の伝統工芸「九谷焼」の窯元です。
明治時代の建物を一部改装した工房では、食器、花瓶、鉢など、多様な九谷焼素地を製作。2階にはショップ&ギャラリースペースを備え、直接製品を購入できるだけでなく、職人の繊細な手仕事に目を見張る貴重な年代物の九谷焼を鑑賞することも可能です。
また小さな道を挟んだ工房の向かいには、ショールーム兼体験工房の別棟もあり。観光の要素も取り入れるべく、近年実施が開始された予約制の体験コースでは、ろくろによる器づくりと絵付け、さらには工場見学もできるとあって、外国人観光客をはじめ、子どもから大人まで幅広い世代に人気だそう。

早速工房へ潜入取材! まずは九谷焼の歴史と特徴から

と、『宮吉製陶』の基礎知識を頭に入れたところで、早速、工房へと潜入。ガイドは広報担当の陳宮吉さん。
「そもそも九谷焼は、江戸時代前期、加賀藩の命により有田で陶技を学んだ後藤才治郎が、江沼郡九谷村で開窯したのが始まりと言われています。しかしその後同窯は、わずか50年ほどで廃業。理由は諸説あるそうですが、当時焼かれたものは今では『古九谷』と呼ばれ、現存数が少ないことから、極めて希少価値が高いとされています」。

「みなさん九谷焼と聞くと、色彩豊かな絵付けの器を思い浮かべるのではないでしょうか。『宮吉製陶』では、釉薬をかける前の素地に染線という藍青色の呉須で線を描き、焼成後の器に、九谷五彩と呼ばれる赤、黄、緑、紫、紺青の産地独特な上絵具を施します。
また器の原料に花坂陶石を使うのも大きな特徴。花坂陶石でできた素地は、焼き上げると少し青みがかった色合いになり、この色味も九谷焼ならではですね」。

石川県小松市には、日本有数の陶石山『花坂陶石山』があり、専門家の中には、「花坂陶石を使わないものは九谷焼ではない」という意見もあるのだとか。

熟練の職人技が光る!『 宮吉製陶』の製作現場

『宮吉製陶』では、ろくろ手挽きや型打ち、型おこしといった人の手でつくるものと、ローラーマシンや圧力鋳込みによる機械成形のものを5:5の割合で製造。
「人の手でつくるものは薄く仕上げることができる上に、一つひとつ表情が異なり、個性が出るのが魅力だと思います。機械成形は、製造時間の短縮や量産が可能なので、業務用やOEMに対応しています」。

成形したものは乾燥後に窯へ入れて素焼きを行います。工房の中には、素焼き前の器を置く陳列棚がたくさんあり、取材中、「ぶつからないように気をつけねば!」と緊張する場面も。また成形段階での細かな文様付けは、その多くが熟練職人による手作業。みなさんビシビシに集中しながらの作業のため、取材チームも息を殺して見守ります。

この日は、社長自らが行う施釉の工程を拝見することができました。施釉とは焼き物に釉薬をかける作業で、表面をコーティングしながら、自然な色艶を引き出します。施釉後は、ザラザラとした素材のベルトコンベアーに乗せ、窯に入れたときに底がくっ付かないように、器の高台(底にある輪状の基台)の下の釉薬を落とします。

また、ハンコ技法と呼ばれる、焼き物にハンコを押して同じ文様の輪郭線を付ける技術も間近で見ることもできました。
作業場を見せてくれたのは、記事後半にも登場するハンコ絵付け師の久保さん。
「うちの家系が九谷焼をつくっていたこともあり、九谷焼があるのが当たり前の環境の中で育ちました。23年ほど前に石川県能美市にある九谷焼技術研修所で学び、姉が染付けをやっていたので、そこで仕込んでもらいました」。
全体のバランスを見ながら行う繊細な作業は、仕上がりを左右する大事な手仕事。経験豊富な職人だからこその卓越した技術が光ります。

白磁の<白九谷>の魅力とは?

ここでちょっと余談。五彩が特徴的な九谷焼の中でも、伝統的な製法を採用しつつ、<白九谷>という真っ白な焼き物も提案している『宮吉製陶』。その理由はいかに? 陳宮吉さんにお話を聞きました。
「九谷五彩が好きな方にとって<白九谷>は異端かもしれませんが、九谷焼ならではの白磁の美しさも、大きな魅力だと思っています。
私たちには、時代の変化やニーズに応じて新たな提案をさせていただき、たくさんの方に九谷のものづくりを応援していただきたいという想いがあります。窯元、絵付け師、作家、問屋など、多くの人々が携わる分業制をベースとした九谷焼の中で、私たちは成形に特化した窯元として、その得意分野をより進化させながら、これからの九谷焼のさらなる発展に繋げていきたいとも考えています」。

ワクワク感いっぱいの商品企画

工房の見学を終えたあとは、冒頭でもふれた『THE HARVEST』とアーティスト須田悠さんを迎えたOMUSUbeeの新しい試み、九谷焼コラボレーションの商品企画打ち合わせ。須田さんの構想とラフ画をもとに、ハンコ絵付け師の久保さんも交えてミーティングを行いました。

須田さん「カエルをメインモチーフに、加賀の水引を取り入れたデザインなどを数パターン考えてきました」。
久保さん「水引は、つながっているよりも独立させて位置を変えるのもありかも。一皿に何種類も絵柄が入るのは楽しいですね!」。
陳宮吉さん「ハンコを作る限界、押す時にどうなるか? などは懸念ですね」。
久保さん「うーん、須田さんの絵を再現するのは、ハンコでは難しいところもありますが、手直しでどこまでできるか……。線の細さや太さを活かした味と風合いが表現できるかもしれないし、枠線から色がはみ出ても面白いとは思いますね」。
坂手さん「須田さんのデザインが活かせる数種類の食器を選んでみてはどうでしょう? 日常使いができる九谷焼の中からいくつかセレクトしてみるのも良いかと」
…………

などなど、四者四様の意見が交錯。OMUSUbeeのスタッフも加えて、それぞれの想いが込められた九谷焼の新商品。どんな仕上がりになるのかは、今後のお楽しみに。

九谷焼窯元 宮吉製陶
住所:石川県小松市吉竹町ツ3-62 MAP
URL:https://miyayoshiseitou.jp/
Instagram:miyayoshi_kutani

Credit
Photo_Yuki Araoka & Satoshi Yamamoto
Text_Sayaka Miyano
Edit_Satoshi Yamamoto



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