2023.10.11
地方と都市を結ぶため、全国のローカルカルチャーにクローズアップするOMUSUbeeの編集部員が、旅先で見つけた情報とその魅力をお届けする本企画。今回は、福島県は浪江町の復興のシンボル、『道の駅なみえ』におじゃましてきました。
目次
2017年、原発事故から6年ぶりに避難指示が解除された福島県浪江町。しかし6年というブランクは大きく、実際に町に戻って来れているのは、まだわずか。そんなこれからの浪江町の復興拠点として作られたローカルスポット、『道の駅なみえ』。
いわゆる普通の道の駅とはまた異なる意味合いもあるとのことで、その辺りを中心に、トップ画像でもご登場いただいた広報担当・山崎さんにお話を聞いてきました。
浪江産をはじめ福島県産の生鮮食品やプライベートブランド商品などが数多く並ぶこちらの本館と、伝統的工芸品『大堀相馬焼』や地酒などを取り扱う別館『なみえの技・なりわい館』の2棟で構成される『道の駅なみえ』。浪江町の復興の糸口として、近隣住民の方々からの要望も取り入れつつ、2020年にグランドオープンを果たした複合施設です。
「避難指示が解除された後に、町の方々が顔を合わせる場所がなかったので、とにかく人が集まれる施設を目指して作りました」と山崎さん。物販スペース以外にも談話室を設け、コミュニケーションの場としても機能させているそうです。
道の駅には欠かせない、地場産の農作物たち。中でも〈浜の輝〉というブランド玉ねぎは、震災以降に栽培が始まったという浪江町の新たな名産品。ジューシーで甘みが強い味わいで、生玉ねぎはもちろん、スープやドレッシングなどの加工品も人気。
浪江町内の漁港『請戸漁港』で水揚げされた、鮮度抜群のシラスも大人気。
『ももいろクローバーZ』の佐々木彩夏さんを中心として結成された応援団、『浪江女子発組合』とのコラボ商品もあり。実は山崎さんも『ももいろクローバーZ』の大ファンだとか。「私がお声がけしたわけではないですが、ファンとして本当に嬉しいです。彼女たちがきっかけとなり、浪江町に移住した方もいるんですよ」。
圧倒的な売り上げNo.1商品、地元名物〈なみえ焼そば〉。「元々は農業や水産業の方々のために考え出されたメニューなので、とにかくボリューム満点で高カロリーです」。
お土産物以外の商品も必要だということで誘致された『無印良品』。なんでも道の駅では全国初の出店だとか。
「元々はコンビニが入るはずだったんですが、周りにいくつかコンビニが建ち始めていたんです。じゃあどうしようかということで、衣料品から生活雑貨まで揃う『無印良品』さんにお声がけしました。道の駅での出店は前例がなかったそうですが、浪江町の復興のためにと、ひと肌脱いでいただきました」。
フードコート内の『レストランかなで』では、町内の漁港から直送される海鮮や、ボリューム満点のご当地グルメ〈なみえ焼そば〉が楽しめます。「シラス盛り放題の〈釜揚げしらす丼〉も人気ですね」。
その他、中華そば、生そば、生うどんを提供する『麺処 ひろ田製粉所』、福島県産のフルーツなどが味わえる『ふくしまフルーツラボ』もあり。
本館と別館の間には、『ふくしま応援ポケモン』に任命されたポケモン〈ラッキー〉をメインモチーフにした公園、『ラッキー公園 in なみえまち』も。「実は『株式会社ポケモン』さんと福島県は、復興事業の協力関係にあるんです。特にこの浪江町は、原作者の田尻 智さんのお父さまの出身地ということで、とても縁深い場所。たくさんのポケモン好きからご好評いただいている自慢の施設です」。
『なみえの技・なりわい館』と称されたこちらの別館には、文字どおり地域に伝わる伝統の技と生業にフォーカスしたテナントが加盟しています。ここでしか見つけられない逸品に出会える場所として、多くの観光客からも大好評な場所だけに、きっとスペシャルなお土産物が見つかるはず。
別館に入って左側は、浪江の酒蔵・鈴木酒造店の地酒を取り扱う酒販店『Sakekura ゆい』のスペース。試飲もできるので、お気に入りの銘柄を探しに行ってみてはいかがでしょう。
また併設される酒蔵『鈴木酒造店』は、江戸時代末期に浪江町で創業したという大老舗。震災の影響で移転を余儀なくされましたが、同館の開店に合わせて戻ってきたという、まさに浪江町の技と生業が備わった酒蔵さんです。
別館の右側スペースは、浪江町の大堀地区で生産されてきた伝統的工芸品『大堀相馬焼』のギャラリー&ショップ。震災で散り散りになってしまった窯元さんの作品を展示販売するとともに作陶教室なども実施しているので、陶芸好きの方は是非一度覗いてみてください。
「ここは『大堀相馬焼共同組合』さんの管轄で運営しています。前述の酒蔵さんもそうですが、とにかくかつての浪江町にあった産業や伝統を戻したいという想いで、こちらの別館は構成しています」。
震災から10年近くも時が止まったままだった浪江町。『道の駅なみえ』は、その失われた時間を取り戻す呼び水として、まさに地域一丸となって運営しています。
山崎さんは言います。「この施設には、単純に道の駅としてだけでなく、地域の方々の交流の場だったり、地元の雇用を生む場だったり、伝統を継承する場だったり、たくさんの意味があると思っています。そしてそれらを実現するため、『浪江女子発組合』さんや『株式会社ポケモン』さんなど、多方面からの援助を受けて運営しています。オープン時がコロナ禍の真っ最中だったということもありますが、グランドオープンから3年、いまだにご来場者様の数が増え続けているというのは本当に驚きですし、感謝の気持ちしかありません。
これからも面白いイベントをたくさん仕込んでいますので、この記事を読んでいるみなさんも、お近くにお越しの際には是非『道の駅なみえ』にお立ち寄りください」。
道の駅なみえ
住所:福島県双葉郡浪江町大字幾世橋字知命寺60 MAP
URL:https://michinoeki-namie.jp/
Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Edit & Text_Satoshi Yamamoto
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