2023.10.06
避難指示解除から1年が過ぎ、ようやく町内の居住者も100人近くにまで増えてきた福島県双葉町。まさにこれから奇跡の復活劇を起こさんとするこの町で、ひと足早く復活への狼煙を上げたプロジェクトがありました。それが『FUTABA Art District』。無人となった双葉町の町並み自体をアートスポットへと昇華した、大小様々な壁画アートを紹介します。
目次
壁画やオーダーアート制作を手がけるアートカンパニー『OVER ALLs』代表の赤澤さん(写真右)と、かつて双葉町駅前で飲食店を経営していた同町出身の高崎さんが中心となり、2020年夏に始動したプロジェクト、『FUTABA Art District』。
約10年も無人のまま放置されたこの町が、再び活気を取り戻すにはどうすれば良いのか。そこに必要なのはきっと、“HOW”(=方法論)ではなく“WOW!”(=感情論)。そんな人々の“WOW!”を引き出すために町全体をキャンバスに変えた、人々の心に火を灯すウォールアートプロジェクトです。
実際にアート制作を手掛けたのは、赤澤さんの無二のパートナーであり画家の山本さん(写真左)。そこに双葉町の有志の方々も加わって描かれた、力強い作品の数々を巡ってきました。
『FUTABA Art District』の記念すべき第1作。 “HERE WE GO”の言葉に、まさに『ここから始まる』という決意を込めた、本プロジェクトを象徴する1作です。
制作から約3年もの月日が経ってしまっているので左側の壁が一部崩れてしまっていますが、本来はこの崩れた箇所に、前出の高崎さんの左手をモチーフにしたグラフィックが描かれていたそう。
またこの場所は高崎さんが経営していたお店の跡地でもあるとのことで、そういった点でも意味深い作品に。
建物の正面と側面にグラフィックが描かれたこちらの作品は、10年という時間の経過を表現。
側面の子どもは、実際にこの建物に住んでいた当時2歳の男の子がモチーフ。そして正面の壁で車のバックミラーの中に描かれた人物は、その子の10年後の成長した姿がモチーフ。さらにバックミラーに映る町の風景は過去の双葉町、フロントガラスに映るのは現在の双葉町と、多層的に時間の移り変わりを表現しています。
40mにも及ぶ『双葉中央アスコン』の壁に描かれたシリーズ最大クラスのこちらは、ここ双葉町で江戸時代から受け継がれてきた伝統行事『ダルマ市』の中で行われる、『巨大ダルマ引き』がモチーフ。
小さな子どもから大人まで、様々な手が綱を引く様子は、老若男女が力を合わせて未来を手繰り寄せる、これからの双葉町の姿をイメージしているそう。
それぞれの手は、実際に双葉町出身の方々の手をモデルに描かれています。
双葉町の象徴として、数多くの地元住民から愛される伝統行事『ダルマ市』。中でも最も盛り上がる行事内のイベント『巨大ダルマ引き』で使用される巨大ダルマを、シンプルかつ力強く表現。左目には、あの日の町の様子が描かれています。
『ころんだ』ではなく、『すすんだッ』を作品名に起用するあたりも心ニクい。
前述の“HERE WE ARE 〜ヨイショ!〜”でも使用された、『双葉中央アスコン』の北側壁スペースに描かれた巨大作品。モチーフは、国の重要無形民俗文化財にも指定される福島県相馬市の伝統行事、『野馬追』。
そこで着用される甲冑の衣装を、スーツや現場作業着など、現代人の日常的な仕事着姿と重ね合わせて表現した、伝統性と現代性が交錯する1作です。全長30m超の大迫力は必見!
第1作目の“HERE WE GO!!!”制作から約1年半が経過した2022年3月。『FUTABA Art District』のフィナーレとして町内の複数の壁に描かれたシリーズ作品、“HUMAN POWER!!!”。最後を締めくくるモチーフに選ばれたのは、プロジェクトに協力してくれた双葉町と近隣住民の方々の笑顔でした。
実は赤澤さんと山本さんは、第1弾制作の段階から、住民の方々の笑顔が描きたかったとか。そんなお二人の想いが実現した、まさに集大成と呼ぶにふさわしい作品です。
復興への道のりはまだ始まったばかりですが、この笑顔が町中にあふれていれば、きっと大丈夫。まさに“HOW”ではなく“WOW!”で人々を勇気づける『FUTABA Art District』。アートの持つ本当の力を、是非みなさんも感じてください。
OVER ALLs
東京を拠点に日本全国、世界へも活躍の場を広げるミューラル(壁画)アートカンパニー。企業理念や会社の歴史を壁画として表現する、オフィスアートのトップランナー。「楽しい国ニッポン」を目指して、人の・会社の・街のWOW!をアートで表現し続けている。「情熱大陸」「news zero」や「サンデージャポン」など、多数のメディアにも出演。
http://www.overalls.jp/index.html
©2022 OVER ALLs
Credit
Photo_Taijun Hiramoto
Edit & Text_Satoshi Yamamoto
▼関連記事