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2025.07.04

“もったいない”から価値を生み出す。暮らしの気分をあげる『サニーロケーション』のモノ作り

地方で輝くモノ・ヒト・コトにスポットを当てた連載企画『地域創生ローカルヒーローズ』。今回はHESTA LIFE storeでもその商品を取り扱う、エプロンを中心としたファブリックブランド『サニーロケーション』さんにクローズアップ。商人の町として知られる大阪の中でも、クリエイティブなモノ作りの匂いが漂う西区立売堀にアトリエを構える同社代表・今津さんの元を訪ね、プロダクトに込めた思いやファブリックブランドとしての姿勢についてお話を伺いました。

30年に渡る経験を背景に、まだ見ぬ価値をカタチにする

性別問わず誰もが使える、シンプルでカッコよくてディテールにもこだわったエプロンが欲しい! そんなHESTA LIFE store担当バイヤーのアンテナに引っかかり、2025年春より取り扱いを開始した『サニーロケーション』。30年もの長きに渡りテキスタイル業界に携わってきた生地作りのプロ今津郁弘さんが、2019年に独立起業したエプロン/ファブリックブランドです。そのベーシックでありながらも工夫が効いたデザインは、まさにバイヤーのイメージをそのままカタチにしたような存在。長年の経験とアイデアを活かしながら、「通常なら世の中に出ていかないような生地にも価値を与え、その魅力と存在を届けたい」という想いを胸に、日々モノ作りに向き合っています。

素材にもディテールにも、らしさあふれる発想力

不均一な素材の個性を活かし、世に出ぬ生地に価値を与える

知人と立ち上げた前職で、30年間テキスタイルと向き合ってきたという今津さん。しかしその日々の中で、いつも胸に引っかる存在がありました。それが前述の、世の中に出ていかない生地。今津さんはそこにもったいなさを感じると同時に、大きな魅力も感じていたそう。
「ある程度のロット数で生地を作っていると、どうしてもズレって出ちゃうんですよ。例えばそれはちょっとした色ブレだったりするわけですが、やっぱり均一性を重視する大手さん相手では許されない。つまり納品できないんです。実は世の中には、そういう日の目を見ないB品生地がたくさんある。だけどそれってある意味では個性だし、まるですべて表情が違うヴィンテージ古着のような、その生地だけの味わいだと思うんです。僕はその不安定さに、むしろ魅力を感じています」。

目の肥えた人だけが気づける、ひとつひとつに個性のあるおおらかな生地たち。そんな素材に目を向けて、今津さんは2019年、自身のブランド『サニーロケーション』を立ち上げました。
「もちろん、”もったいないから“っていう想いは大きいです。だけど、エコとかSDGsとかって打ち出し方は、ちょっと苦手かな。確かに”もったいない”もあるけど、決してそれだけではなくて、そこにちゃんとモノとしての価値を見出してカタチにして届けたい。それは縫製の現場も一緒で、例えば家族経営の小さな工場が持ってる職人技とかって、確かに大量生産には向いていないけど、本当に素晴らしいんですよ。だったら僕が、その魅力も拾い上げたいと思ったんです」。
『サニーロケーション』は、そんな“世に出にくいもの”を選び取り、プロダクトとして昇華させるためのブランド。そこには、量産効率やマーケティングでは計れない、目利きと愛着から生まれるクラフトマンシップが根付いています。

着るだけで不思議と気分があがる、匠の技の構造作り

今津さんが作るエプロンは、誰にでもフィットするシンプルデザインが特徴。だけどそこには、実際に使ってみて初めて気づく、細かな仕掛けが満載です。
「エプロンって平たくいうと作業着じゃないですか。でも作業着って言われると、なんだかやらされてる感がありますよね。だからウチのエプロンは、料理でもなんでも、自分の時間を楽しむための相棒として、身に着けるだけで少しテンションが上がるような存在になれたらって思っています」。
そんなこだわりは、例えば腰紐の取り付け位置などにも見て取れます。これは、ご覧のようにウエストラインのトップから少し下にズラすことで、胸当てを折り返してギャルソンタイプとして使ったときにも、腰のラインがきれいに見えるように計算された仕掛け。
「めちゃくちゃ細かいんですけど、そういうひと手間が好きなんです。縫製現場からは『めんどくさい!』って言われますけどね(笑)」。
ほかにも、腰まわりのギャザーやタックは体型を拾いすぎないように設計されていて、すっきりスマートなシルエット作りにこだわったり。こうした丁寧な工夫が、誰が着ても“なんかイイ感じ”を自然に引き出してくれる。
「実際、男女問わず“なんかサマになる”って言ってもらえることが多いんですよ。僕も年々ぽっこりしてきてますけど(笑)、それでも着たらちゃんとカタチになるようなディテールデザインには、実はけっこうこだわっています」。

エプロンだけじゃない。暮らしの中で光るアイテムたち

偶然の出会いが生み出した、切って使えるキッチンクロス

エプロンに並ぶ人気アイテムとして、HESTA LIFE storeでも取り扱う『サニーロケーション』のキッチンクロス。一見するとシンプルなフキンですが、その裏側には、ちょっとユニークな誕生秘話がありました。
「ある時、たまたま工場の社長さんがひとりで織り機を回しながら、サンプルみたいなのを織っていたところに出くわしたんです。ガーゼの生地でね。触らせてもらったら、これがとても柔らかくて心地よくて、めちゃくちゃ水も吸いそうだなって。で、実際に試してみたら、やっぱりタオルより全然吸うんですよ。じゃあフキンにしちゃおう、ということで作りました(笑)」。
元は生地サンプルとして織られていたその生地に、今津さんは新たな可能性を感じたそう。柔らかく、肌当たりもよく、そして抜群の吸水性。キッチンに掛けたり手を拭いたりはもちろん、安心の綿100%だから洗顔後のタオル代わりにも使えそうだな、と。今津さんは続けます。
「このフキン、実はちょっと秘密があって。色の切り替え部分ともう1箇所、計2箇所にスリットが入ってるじゃないですか。これって、タオルとかの生地端の始末と同じなんですよ。だからこのスリット部分だったら、ハサミでジョキジョキ切ってもらってもほつれない。好みや用途によって、サイズを変えられる仕組みなんです。好きに切って使えるって、すごく実用的ですよね」。
こうして製品化されたキッチンクロスは、いまや『サニーロケーション』の定番品に。華美な装飾はないけれど、日々の暮らしの中で“本当に使える道具”として、多くのリピーターに愛されている名品です。

復活なるか? 撮影チームも惚れた幻の名品ストール

さまざまなファブリックがあふれるアトリエ内を見回していると、ふと気になるアイテムが。聞けばこちらは、惜しくも生産終了となってしまったというストールたち。こんなにカッコイイのにもったいない……。
「これはテキスタイルデザイナーの鈴木マサルさんが手掛ける『オッタイピイヌ』とのコラボ企画で、大阪の泉大津で生産したメリノウール100%のジャカードストールです。泉大津って毛布産業で有名なんですが、やはりコスト的に海外と勝負するのが難しく、けっこう厳しい現状にあるんです。だからこそ、泉大津産で面白いことができないかと思い制作しました。ですがちょうどコロナのタイミングでリリースしたのと、販売価格も決して安くなかったので、いかんせん動きが悪くて……。だけどこれだけの大判柄で作っているところは滅多にないし、個人的にもかなり気に入っているシリーズです。なので、これに興味を持ってもらえるのはとても嬉しいです」。
そんな背景を聞いてさらに気分が高揚した撮影チームは、そのデザインの可能性と生地のクオリティに首ったけ。「これ、HESTA LIFEとのコラボとかできたら最高じゃない?」なんて声も飛び出し、アトリエ内はちょっとした盛り上がりに。取材のはずが、気づけば「これ欲しい!」モード全開で、ワクワクが止まらないお宝発見タイムとなりました。

暮らしが輝く『サニーロケーション』の誠実なモノ作り

エプロンからフキン、ストールまで。今津さんが作るアイテムに共通して感じたのは、「誰かの暮らしの中で、静かに気分をあげられる存在でありたい」というスタンス。そしてインタビューの最後に今津さんが語ってくれたのは、まさにその根底にある率直な想いでした。
「なんかこう、大それたことをやりたいわけじゃないんですよ。ただ、人々の暮らしの役に立ちたいという気持ちが、自分の中ではいちばん大きいんじゃないかな。エプロンもそうですけど、着ることで少しでも気分が前向きになったり、何かが始まるスイッチになってくれたらうれしいですね。そのために欠かせないのが、現場とのつながり。縫製工場さんだったり生地の問屋さんだったり、現場の人たちとどう向き合って、どう一緒にやっていけるか。それが僕にはすごく大事。いわば財産ですからね。分業が当たり前の業界だからこそ、そこをちゃんと繋いでいきたいなと思っています」。
華やかな打ち出しよりも、目の前の人や現場に向き合いながら、じっくり丁寧に作っていく。その誠実なモノ作りへの姿勢こそ、『サニーロケーション』の本質なのかもしれません。

デイリーに使いやすいけど、自然と気持ちが高揚する。今津さんが生み出す『サニーロケーション』のアイテムは、そんな暮らしの気持ちにそっとフィットしてくれる存在。
私たちHESTA LIFE storeでは、今回ご紹介したエプロンやキッチンクロスなど、そのこだわりのラインナップを展開中。家事の時間、趣味の時間、誰かと過ごす時間。そのすべてを少しだけ心地よくしてくれるファブリックたちを、皆さまも是非1枚。毎日の当たり前の作業が、きっと楽しい時間になること請け合いです。


Credit
Photo_Ryo Sato
Text & Edit_Satoshi Yamamoto


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