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2023.12.22

山形県の無形文化財『深山和紙』に
ふれる・まなぶ・創作する

全国各地の伝統工芸にクローズアップする連載企画、「ボクとワタシの伝統工芸」。今回は、山形県は白鷹町内の集落、深山(みやま)地区に伝わる『深山和紙』をご紹介。その伝統技法を守りながら発信する『深山和紙振興研究センター 』を訪問し、エリア唯一の深山和紙職人・高橋さんにお話を聞くとともに、和紙のちぎり絵制作も体験してきました。

深山和紙職人/高橋 恵さん

山形県庄内町出身。旦那さまの仕事の関係で白鷹町に移住したことをきっかけに、『深山和紙』に出会う。しかし後継ぎがいないということを知り、自ら弟子入り。以来20年以上、地域の方々と協力しあいその伝統を守り続ける、深山地区でも唯一の専業深山和紙職人。


のどかな山間の集落に伝わる伝統工芸『深山和紙』の本丸へ!

自然豊かな山形県白鷹町の中でも、市街地からさらに離れた山間の集落、深山地区。そんな昔話に出てきそうなのどかな土地に居を構える、今回の目的地『深山和紙振興研究センター 』。建物の外にある東屋には柿や大根が干してあり、まさに古き良き日本の故郷を思わせる風景に、スタッフ一同ほっこり。昔ながらの引き戸をガラガラッと開き、その敷居をまたぎます。

出迎えてくれたのは、ここを工房として使用する深山和紙職人の高橋さん。伝統工芸の職人さんということで、ちょっと気難しかったりするのかな? なんて思っていたスタッフたちを満面の笑顔で迎えてくれました。

高橋さん、まずは深山和紙について教えてください。

「深山和紙は、今から450年以上前、江戸時代初期に始まったと言われています。元々は農作業ができない長く厳しい冬の時期に、それぞれの家庭で行われていた家内工業として受け継がれてきた文化でしたが、西洋紙が普及した現在では、ほとんど廃れてしまった産業です。この集落の中でも、職人として活動しているのは、もう私ひとりだけなんですよ」。

え! ただひとり!? そう聞いて驚きましたが、だからこそ、この伝統を守ろうと、集落全体で高橋さんをバックアップしているそう。
「ここで『深山和紙』を作り続けているのは私ひとりですが、『深山和紙』の工程は、いわゆる紙漉きだけじゃありません。漉きの作業は全体のほんの一部で、その手前には、原料となるコウゾの生産・収穫・加工や、漉きのときに繊維の分散を助けてくれるノリウツギの刈り入れなど、男手と人数が必要な仕事がたくさんあるんです。そういった工程は、集落のみなさんに協力してもらっています。
だから決して私ひとりでやっているわけではなく、深山の集落が一丸となって守り続けている伝統なんです」。

製品ではなく工程が文化財に!

そんな『深山和紙』の生産工程は、山形県の無形文化財にも認定されています。和紙でもなく人でもなく、生産の工程自体が文化財に認定されているという点からも、いかにこの和紙作りが地域文化として根づいているかが窺えます。
また細かな工程は白鷹町のHPでも公開されているので、お時間のある方はチェックしてみてください。きっと、その工程の多さに驚くはず。

一方そのころ女子ふたりは和紙アートに挑戦!

高橋さんにお話をうかがっているその横で、取材に同行したOMUSUbeeガールズは『深山和紙』を使ったちぎり絵制作を体験。用意された色とりどりの和紙から好きな色を選び、サンプルを参考にしながら、ちぎって貼って、思い思いのアート作りに挑戦します。どんなものができたのかは、また後ほど。

『深山和紙』が繋ぐ人と人とのコミュニケーション

ところ変わって、こちらは大きな釡を備えるふかし小屋。毎年1月末頃の日曜日に集落住民が集まって、朝4時から釜に火を入れ、蒸気でコウゾをふかして柔らかくするための専用小屋です。ちなみにその際は、地域で獲れたジビエを持ちより、お酒を酌み交わしながら行うのが常。『深山和紙』の生産は、地域のコミュニケーションとしても大いに機能しているのです。

高橋さんは言います。「この地域の小学校では、伝統的に『深山和紙』を卒業証書の紙に使用しています。だけど今から20年以上前、先代の職人さんが引退を考えている、という話を聞いたんです。しかも後継者がいない。だったら私がやります、ということで、ここに弟子入りしました。
私にも子どもがいて、当時まさに小学生。うちの子だけでなく、子どもたちには絶対に『深山和紙』の卒業証書を受け取ってほしかったんですよね」。
そんな想いで和紙職人の道を志して20年超。高橋さんがあとを継いだことで、現在も『深山和紙』は、地域の小学校の卒業証書に使用され続けています。

「卒業証書って、厚みを出すために2枚を貼り合わせてるんですね。だからうちでは、6年生のお子さんが親御さんと1枚ずつ紙漉きをして、それを貼り合わせて自分たちの卒業証書を作るっていう体験も実施しています。大概、親が裏紙担当ですね(笑)」。
親子共同で卒業証書を作るとは、なんて素敵な体験! 高橋さんが継承した『深山和紙』という伝統工芸は、単に技術を継承しているだけでなく、地域に根づいた文化として、人と人を繋げ続けているのです。

工程の中で最も苦手な作業とは……

最後に高橋さんは、冗談交じりでこう話してくれました。
「ここにいるのは基本的に私ひとりですが、近所の方々もしょっちゅう遊びに来てくれます。時にはお酒を持って(笑)。ちょっとした寄り合い所みたいな感じですね。だから特に寂しくもないし、毎日の自分の仕事量が現実的に目で確認できるので、日々達成感を感じることができます。できたものがどんどん溜まっていくのが楽しいんですよね。だから作った和紙が全部出ていってしまう、納品作業が1番きらいですね(笑)」。

OMUSUbeeガールズの和紙アートが完成!

と、高橋さんから色々なお話をうかがっている間、OMUSUbeeガールズのふたりは作業にガッツリ集中。汗をかかんばかりに黙々と制作に向き合い、気付けばそれぞれの作品を完成させていました。

編集部
シライシさん
作品:左_雲、右_紫陽花

「ご用意いただいた和紙のバリエーションを見たときに、青系の色がとてもキレイで、フワフワっとした感じだったので、パッと雲を作ろうと思いつきました。迷いなく作れた分時間が余ったので、同じく色からヒントを得て紫陽花も作ってみました」。


デザイナー
さらちゃん
作品:なんかお花

「なんの花ってわけではないですが、なんかお花です(笑)。色使いとか重ね具合とかもそうですが、こよりで表現した立体的な茎の部分がポイントですね。仕事以外でなにか作ることってあまりないし、久しぶりに紙をちぎったり貼ったりしたのが楽しくて、汗かくくらい夢中になっちゃいました」。

伝統の美技が詰まったギャラリーショップもお見逃しなく

そんなこんなで、インタビューも制作体験も終了。最後に、『白鷹人形』などの『深山和紙』を使用した各種工芸品を展示販売する、建物別室のギャラリーショップスペースを拝見して、この日の撮影はフィニッシュ。ここでしか手に入らない伝統あふれる美しいお土産品を、ぜひ見つけに来てください。

また作業スケジュールとの兼ね合いで実施できませんでしたが、『深山和紙振興研究センター』では、今回のちぎり絵体験だけでなく紙漉き体験も実施中。ともに本格的な量産時期を外した4月〜11月の期間内にて、要事前予約で受け付けしているので、興味のある方はHPをご確認ください。

後継者も常に募集しているそうなので、我こそはという方は、まずは上記体験から初めてみてはいかがでしょう。


深山和紙振興研究センター
住所:山形県西置賜郡白鷹町大字深山2527番地 MAP
URL:https://www.town.shirataka.lg.jp/1294.htm


Credit
Photo_Yozo Yoshino
Edit & Text_Satoshi Yamamoto


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